水遊びだけど親子水入らず


子供達の水着を物色した後、近くの大きな公園に行った僕ら。

そこには人工の川がちょろちょろと流れており、

「暑いからいっちょ海に行って遊ばせたいのだが、この天気じゃなー」

と迷っていたので、水遊びをさせるにはうってつけであった。同じことを考える人達は沢山いたようで、すっぽんぽんで遊ぶ子供とその親がわんさかおり、さながらガンジス川のようになっていた。

本当は7月ごろに沖縄の海にでも行こう、と嫁が計画を立てて盛り上がっていたのだが、なんかめんどくなってしまったのと

「もうちょっと子供達が物心付いて、記憶にしっかり残る年頃になってからにしよう!」

という腹黒い親心のために当面延期することにしたのである。今では

「海?お台場あたりでいいっしょ」

嫁のモチベーションは低下している。ちなみに僕がソロ活動で行う、なんとかベーションの頻度は低下していない。

「ま、すまんね、こんなところで…」

息子・タク(9ヶ月)はベビーカーの中で爆睡してしまったので、娘・R(2才)をおむついっちょうにして川辺に近付けてみた。今までも何度か海であるとか川であるとかでRを遊ばせようとしたことがあったが、Rは怖がりでなかなか水辺に近寄ろうとしない。僕が手を引いてようやくソロリソロリと入っていく、という按配なのだ。

一方でタクはわりと命知らずの特攻(ぶっこみ)野郎なので、何も考えずじゃぶじゃぶ入って行きそうなので、逆に押さえておかないと危ないぐらいの感じなのだが。

「どうだ、R。ひとりでお水の中に入っていけるかい?」

Rの顔色を窺っていると、いくらか怯えた表情に見えた。しかし今日は違った。きっと前を見て、僕が手を繋いでいなくても自分からちゃぷちゃぷと川に入って行くではないか。

「ぱぱ、みてみて~」

自分でも嬉しかったのか、Rはひとりでできたことを僕にアピールする。

「ああ、またひとつ成長したね…」

僕の涙腺が熱くなった。Rも勇気を以って一大決心をしたのであろう。この人工の川はRにとってのルビコン川。

すなわち、賽は投げられた。

一方で男女問わずお子様が裸で遊びまくるこの川は僕にとってはロリコン川。いや、さすがに年齢がひとケタのお子様にはみだらな気持ちは起きないが、Rをデジカメで撮りながらも

「いえ、僕は自分の娘だけを撮ってますので。お宅様のご令嬢を盗撮しているわけではございませんので」

と、他の親御様方の視線を気にしつつ、心の中でいちいち言い訳してしまうのは、やはり僕に後ろめたい心があるからなのだろうか。

Rを30分ほど遊ばせた後、帰ることにした。駅に向かう道すがら、ハーゲンダッツの店が見えてきた時、嫁が

「ううう…アイス…アイス…」

歩きながらボソボソ呟き始めた。嫁のアイス中毒が発動したようだ。

「ちょっと、Rに『アイス』なんて単語が聞こえたら絶対『食べる!』って言ってきかないぞ」

僕がヒソヒソと嫁に耳打ちしたのだが、

「…まあ、いいか」

結局買ってしまった。嫁のハーゲンダッツ好きについては僕は諦めている。

すなわち、匙は投げられた。


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