レインボーと暴れん坊。


夕方、児童館の夏祭りがあるというので嫁と子供達を連れて行って来た。

屋上が会場になっていたので上がってみると、我が街の風景を見下ろすことが出来た。あまり高いところから我が街の姿を見たことがなかったので、しばし魅入られてしまった。

なんと汚い街並みだろう。しかしそれは擦り切れるほど何度も読んで、手垢まみれになった本のような汚さである。愛着のある汚さだ。僕はこの街で何度笑ったことだろう。何度大好きだったあの子と一緒に歩いたことだろう。何度泣いたことだろう。何度酔っ払ってゲロを吐いたことだろう。何度野グソをしたことだろう。いや、うんこはしていない。

「あっ虹だ」

嫁が突如叫んだので見上げると

虹
「ホントだ。R(2才の娘)、タク(9ヶ月の息子)、見てみろー」

「うわー、きれいねー」

Rはおそらく生まれて初めて見るであろう虹に見惚れていた。

「ぱぱ、にじ、ふたつ、あるよ!」

Rが空を指差して言うので良く見ると

虹
なるほど、外側にもう1本あった。

「凄いね。よく分かったなあ」

澄んだ瞳で見ているRはとても純粋無垢な姿に映り、そのまま虹に駆け上って行けそうなぐらい、虹と同様のメルヘンで儚げな存在に思えた。

Rよタクよ。お前達の人生はどんな色にでも輝ける可能性を秘めている。あの虹のように7色に輝くことも出来るのだ。でもRはアレかな。いずれ

「あなた色に染まります」

とか言って白無垢のウェディングドレスに身を包んでお嫁にいってしまうのかな。誰だその新郎は。ぶっ殺してやる。

ともかくあの虹をよく見ておくんだよ…。

と言い聞かせようと思ったら、Rはもう虹なんかよりお祭りで貰ったポップコーンを一心不乱に食っているし、タクは屋上のフェンスに掴まり立ちして

タク
「夕日が目にしみるぜ」

とでも言いそうな感じでダンディに気取ってるし、

タク
その後は何故か正座してるし。正座してる赤ん坊なんて初めて見た。

あのー。タクよ。屋上の床、コンクリですよ?硬くないですか?痛くないですか?それより僕と虹見ませんか?痔になっても知りませんよ?

虹ーはボラギノール。


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