2006年04月19日
朝いちもんめ
自室の床に突っ伏したまま寝ていた僕は、夜明けの少し後に目が覚めた。
始まったばかりの朝が運んで来る清らかな光と、僅かに鼻をツンとくすぐる良き匂いを運ぶ微風の中にいると、まるで穢れなき乙女と戯れているような心地良さを覚え、静かに勃起した。風立ちぬ。朝勃ちぬ。
「とーんとん。ぱぱー」
我が家の穢れなき乙女の声がした。娘・R(2才)がノックしているのである。寝室にいなかった僕を探しに来たのだろうか?臨戦態勢の朝勃ちぬを通常営業の状態に速やかに戻し、
「はい、おはよう」
「おあよー」
笑顔の愛娘を抱き締めた。
「グッモーニン。オハヨウノチューシテクダサーイ」
「めっ」
Rはキスをしてくれない。あんまりしてくれないのでアメリカ人のフリをしてキスを請うてみたが、それでもしてくれない。まあいい。いつものことだ。寝室では嫁と息子・タク(6ヶ月)も起きていた。我が家は早起きだ。
「ぱぱ、ぷーしゃん」
「え?ああ、絵本ね」
Rのリクエストで「くまのプーさん」の絵本を読む。内容はこんな感じだった。
「プーさん、オモチャ貸して」
「どうぞピグレット。いっしょにあそぼうね」
「プーさん、ありがとう!」
オモチャ…か。最近タクにオモチャを与えても、Rが嫉妬してすぐ奪ってしまうのである。この絵本のように仲良くしてくれればいいのに。
「Rもタクにオモチャを貸してあげるいいお姉ちゃんになって欲しいな」
ひとことぽつりと口から出てしまったところ、Rはすぐさま消防車と電車のオモチャを持ち出して
「あっくん(タクのこと)、どうじょー」
なんとタクの目の前に差し出したではないか。
「そうだR!おりこうだな!」
なんて素直な心なのだろう。思わず抱き締めてしまった。絵本を交えて教えてやれば、スッとやってくれるの子なのだ。僕は早速別の絵本を読み始めた。
「だいすき、ちゅ」
と子供がパパにキスをしてくれる話である。この「だいすき、ちゅ」のセリフを強調して朗読し
「Rもパパに、だいすき、ちゅ、ってしてくれるといいな」
さあR、君は素直な子。君なら出来る。さあほれほれ。
「めっ」
しかし結果は無情なものであった。
僕の野望、灰燼にキス。どうせ朝勃ちだけが友達なのさ。
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