オタクッキー
毎度毎度のホワイトデーである。
男にとってバレンタインデーは、一見平静を装っている風でも、内面では己のブサヅラも顧みず、誰がくれるかな誰がくれるかな、と大盛り上がりであるのに対し、ホワイトデーは今ひとつ盛り上がりに欠ける。
祭りの後の後処理のような。まぐわいが終わった後の、避妊具をティッシュに丸めてゴミ箱に捨てるという、虚しさの伴う後始末のような。単にこれは無精者の僕だけの考えかもしれない。無論バレンタインにおいても義理チョコに頭を悩ませ、心を重くするご婦人も多いと思う。
しかし心から愛する相手にはそれは当てはまらない。面倒を面倒と思わず、ただあの娘の笑顔を見たくって、オイラは走る無償の愛。武士の情けじゃ。武将の愛。愛という名のもとに。ハマショーの愛。
我が最愛の恋人は娘・R(2才)である。Rには昨日の日記にもある通り
ピノコのコスプレをさせたので、ホワイトデーのお返しも「ピノコもの」を用意した。
アッチョンブリケクッキー。中身はごく普通のクッキーだが、表面にピノコのアッチョンブリケ顔がプリントされている。ホワイトデー当日は平日なので僕は仕事である。だから一足早く日曜日にRに授けたところ、
「おなじでしょ?」
とピノコの絵を指差した。自分のコスプレと同じである、と分かったようである。ああ、またRがひとつ賢くなった。無駄な知識ばかり増やしている気もするが。
Rはポリポリと1枚を素早く平らげ、
「食べるー」
もう1枚ちょうだいと言ってきた。しかし夕飯時が迫っていたので
「今日は1枚だけだよ。また明日たべようね」
と止めたところ、「うん…」と頷いたものの、食べたい気持ちを辛うじて抑えているらしく、僕をじーっと見ており…
こんな恨めしいRの視線、初めて見た。その恨みだろうか、嫁の報告によると、翌日Rは2枚食べて
「おなか、いたい…」
腹を壊したそうだ。可哀想な娘よ。だから1枚にしろと言ったのに。ホワイトデーがブラックマンデーになってしまった。
親を呪えばクッキーふたつ。ちょっと苦しいか。
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