後の祭りの雛祭り


嫁が雛壇を片付けていた。僕は出来るだけRの婚期が遅れたほうが良い、というか誰が嫁になんぞ出すか、と心に決めていたのでRに雛あられを食べさせていた。

Rはお内裏様を指差して「ぱぱ」と言った。どうやらお内裏様を僕に見立てているようである。ふふふ、やはり僕の内面から滲み出る高貴なイメージは隠し切れないようだ(ハナクソほじりながら)

「ほ、マロがお内裏様でおじゃるか。じゃあお雛様は誰でおじゃるか?」

「まま」

「えー。ママなのー?もっと若くてボインボインの娘っ子がよいでおじゃるなあ。じゃあRちゃんはどれでおじゃる?」

「これ、Rちゃん」

Rが指差したのは三人官女のひとりであった。本当なら「わたしがお雛様よ」と主張してもいいのに、なんと謙虚な娘であろうか。僕はいたく感動した。

「じゃあタク(4ヶ月の息子)はどれでおじゃるかな?」

Rが「これがタク」と指差したものは「ひしもち」であった。既に人ではない。可哀想な息子。お前の弟は餅だぞ。それでいいのか。

「えー。せめて人間にしようよ…五人囃子とか…これとかはどう?」

「うん」

ということで、タクは五人囃子のうち、太鼓を持っている子、ということで手を打った。ポンポン。余談だが、三人官女、五人囃子と一緒に七人ミサキ(※)が一緒に並んでいたら怖いと思った。

※【七人ミサキ】

悪事を働いて死んだ霊が七人組となったもの。七人ミサキは絶対七人でなければならず、何らかのきっかけでひとりでも成仏すると、頭数を揃えるため人を殺して仲間に引き込む。

ところでRはひとりで雛あられをボリボリ食べておった。

「Rちゃん、パパにも雛あられちょうだい?」

「めっ!Rちゃんの!」

謙虚だが食い意地の張った娘はひとりで全部食べる気のようだ。

「パパにもくれよー!パパはお内裏様でおじゃるー!雛あられも食べられないお内裏様なんて、ケーキも食べられないマリー・アントワネットみたいなもんでおじゃるー!」

身も蓋も無く、恥も外聞も無く、怒涛のおねだりをしてみたところ、

「はい、ぱぱ、あーん」

哀れみを感じたのか、僕の口に運んでくれたので、僕は感動と雛あられを噛み締めながら、やはり嫁に出すのは惜しいと思い、嫁が片付けている雛壇を再び全部戻そうかと思うのであった。

感謝感激雛あられ。

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