桃の節句す


仕事帰りに薬局で恥ずかしい商品を買った。

アンネタンポンかって?否!僕は男である!このアンポンタンポン!何に使うものかって?キャッ。恥ずかしい。答えられないわ。どんなことを言われても「違う」と否認するのである。避妊するのである。あ、言っちゃった。

さて家に着いた僕は腹が減っていた。今夜のおかずはハンバーグ。性欲もあれば食欲もある。手っ取り早く双方の欲を満たすには、ハンバーグを嫁の体に乗せてハンバーグ女体盛りがよいと思った。

ハンバーガーだけを食べ続ける男のドキュメンタリー映画で「スーパーサイズ・ミー」というのがあったが、さしずめこれは「スーパーワイフ・ミー」である。

しかしこれについては嫁が承諾してくれるはずも無く、なにしろまだ娘・R(2才)と息子・タク(4ヶ月)も起きているので断念した。

「あんばーぐ、食べうー」

既に夕食を済ませたというのに、まだ食い意地が張っているRを膝の上に乗せて一緒にいただきまんもすしたところ、嫁の一言が。

「あなた、烏龍茶もうないからね」

「あ、しまった!」

僕はいつも烏龍茶のペットボトルを買い置きしているのである。それを食事のときに飲む。僕にとっては食事に欠かせない飲み物なのだが、今朝飲み切ってしまったのだった。恥ずかしい商品は覚えているくせに、
もっと大切なものを忘れているなんて、つくづく僕は性欲獣。三度の飯よりアレが好き、ということか。

「嫁ー。なんか飲み物ない?烏龍茶はないから、じゃあコーヒー入れてよー」

「はいはい」

嫁は素直にコーヒーを入れてくれたのだが、

「コーヒーは入れてあげたけど、私の体には入れさせてあげないんだから!」

「なんだその理屈はー!」

恐るべき展開となってしまった。薬局での恥ずかしい商品を買った僕の思惑は、思わぬ嫁の先制攻撃によってぶち壊された。まるでその買い物を見ていたかのよう。嫁はエスパーなのだろうか。伊東なのだろうか。

「じゃあコーヒー入れろって言わなかったら今夜はOKだったのか?

「いえ、どっちみちだめですけど」

「なんだその理屈はー!」

そもそもコーヒーを入れてくれることは、「今日はOKよ」の暗喩なのである。そんなこと聞いたことがない、と思うかもしれないが本当である。昔よく言ったものである。すなわち

ヤッターマン コーヒー ライター。

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