やらせて下さい、もう少し

朝、着替えている嫁を見て欲情してしまった。

擦り切れるほど読んだ「行け!稲中卓球部」のように、何度も何度も見慣れた嫁の体にもかかわらず、飽きもせず発情してしまう僕はパブロフの犬。

「パトラッシュ、もう疲れたよ」

と吐息を吐いて命の火が消えるのだ…ってお父ちゃんそれはフランダースの犬でんがな。

「ああっ。もっと踏みつけて下さい。縛って下さい、『このブタめ』と罵って下さい」

と体液という体液を溢れ出させて土下座すのるだ…ってお父ちゃんそれは女王様の犬でんがな。

湧き出でるリビドオをそのまま嫁にぶつけるのは愚かである。発情期の犬に等しい。昨日も嫁に腰を擦り付けて痛い目にあったので、ここは可愛く擦り寄る作戦で嫁に愛を語るべきだと判断し、娘・R(2才)がよく嫁に甘える仕草をそのまま真似してみた。

「ねえママだっこしてー」

「アンパンチ!」

悲しいことに嫁は僕の求愛をアンパンマンという、

「これを食べると元気になるよ」

と自分の頭を食べさせるキャラクターの必殺技で僕を退けたが、これぐらいでくじける僕ではない。ここで引くようでは子供ふたりも作れない。

「ママだっこしてーよー」

「アンキック!」

今度は蹴りにて跳ね返された。しかしアンパンマンはこの程度しか必殺技を持っていないヒーロー。その数の貧弱さにおいては、千葉のジャガーさん並である。

企業社長でありながらロッカーであるジャガーさんは、その財力により自ら千葉テレビ等の放送枠を自分で買い取り、自分の音楽番組を提供する。「パオパオチャンネル」という子供向け番組のコーナー、「出前ジャガー」においては、悪者を倒したり子供の悩みを解決するヒーローとして人気者となった。気になる方は後で「千葉のジャガー」と検索するとよい。

正義のためならどこへでも♪ロンドンブーツで駆けつける♪
ロンドーンキック!(へい!)フルーツパンチ(ほい!)
ワオワオ吠えーろー♪僕らのジャガー♪

という主題歌にあるように、必殺技はふたつだけであった。何の話だ。アンパンマンだ。嫁にはもう出せる必殺技はない。嫁、敗れたり。

「お前はそれしか技を知らないだろうが、こないだRと一緒にアンパンマンを観た時、『ピストンパンチ』という技を出してたぞ」

「はあ?それどういう技?」

「とにかく突きまくるのだ。ピストンピストンピストン…はうううう」

説明に力が入り、朝から元気になっている、我が身の成り成りて成り余れる部分を嫁の腰にぶち当てまくってしまった。

「ちょっと何突っついてるのよー!」

「これを食べると元気になるよ」

「バカー!」

結局昨日と同じく結果になってしまった。アンパンマンの主題歌に、「愛と勇気だけが友達さ」という歌詞があるが、僕も黒澤愛(のAV)と右手だけが友達になってしまった。

自らのアタマを食べさせる自己犠牲のアンパンマンではなく、
自らのカメアタマを食べさせる、ええかげんにせえのアンポンタンであった、というお話にて御座候。

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