2006年12月08日
愛す、愛す、ベイビー
仕事中、午後6時になったのを見計らったかのように嫁からメールが届いた。
「タク(1才の息子)が38度の熱出して泣きっぱなし。早く帰って来て~」
すわこりゃ一大事。すぐさま家に電話してみると
「あなだばやぐがえっぎでー!」
既に半ベソの嫁の震えた声の後ろからタクの「ぶわあああ」という泣き声が。なんだかもう火星人が攻め込んできたような臨場感溢れる修羅場であった。
「わかった。すぐ帰るから。何か買って来て欲しいものはあるか?」
「こんなんじゃゴハンも食べられないだろうから、アイスでも…」
嫁よ子供達よ今行くぞ。すぐさま仕事をうっちゃってオフィスを出、エレベーターの予備ボタンを押す。
チンと鳴ってエレベーターの扉が開いたので乗り込もうと思ったら
「勉強しまっせ引越しのサカイ~」
と歌いながら出てくる男が…というのはウソで、携帯が鳴った。エレベーターの中では電話が切れる。やむを得ずそれを見送り、電話に出た。
「はいはい」
「もしもし、おとうさん。Rちゃんです」
娘・R(3才)が出た。しまった。忘れていた。僕が嫁に電話をかけると、Rも喋らないと気が済まないことを…。さっきは慌てて切ってしまったが、いつもは嫁と話した後必ずRが出て喋ってくるのである。
「Rちゃん、おしゃべりしたかったんだね」
「おとうさん。はやくかえってきてね」
お父さんも一秒でも早く帰りたいんだけど、電話がかかってきたからエレベーターに乗れなかったんだけどナー。
「じゃあ今から帰るからね」
「うん。きゃはは」
電話を切った後は迅速に90m/min.の高速エレベーターで降り、高速歩きで駅に向かい、高速各駅停車でわが街の駅で降り、駅前の高速コンビニに入ってアイスを探した。
僕は丸いカップに入った100円の、ごくごく普通のバニラアイスを買おうと思ったのだが、その超スタンダードと思われるものがなかった。スーパーカップとか書いてあるやたらでかいのとか、なんとか最中とかそんなのばっかり。何故ごく普通のバニラアイスがないのだ。
30円か50円のアイスしか買えなかった子供の頃、いつも駄菓子屋のアイスケースに鎮座しており、羨望の眼差しを送るしかなかった100円のバニラアイス。最近はないのか?
あの頃覗いていたアイスケースの中身とあまりにも違うことに愕然とした。フタバ食品(※)のアイスがないことにも違和感がありまくりだった。
栃木県にある主にアイスを製造する会社。栃木の子供は皆ここのアイスを食べて育ったのである。栃木のキワモノ名物「レモン牛乳」をアイス化したことでも有名。
栃木が誇る「レモン牛乳」
レモン牛乳アイスについては→こちら
ここは東京だからなくて当たり前なのだが、今更そんなことに気付くなんて。そういえばコンビニでアイスを買うなど初めてかもしれない。冷凍ケースなんて覗いたことなかったもんなあ…。
やむを得ずスーパーカップバニラ味なるものを買って帰った。嫁がAカップなのにスーパーカップだなんてとんだお笑い種だ。
「ただいま!タク、だいじょぶか!」
家のドアを開けると
「ぱぱ、ぱぱ。ぱっぱー!」
1時間前、電話の向こうで号泣していたタクは、いつものひょこひょことした軽い足取りで僕に纏わり付く。おでこに触ると…平熱じゃん。
「なんか、熱、引いちゃったみたい。てへ」
嫁が照れながら言った。どうやらよくよく聞いてみると僕にメール入れる前には病院に行っており、僕との電話の後に貰った薬を飲ませたらブラックマンデーの株価の如く体温がストンと下がったらしい。
「でもおそらく薬で熱を抑えてるだけだから要注意だ」
「すぐ薬飲ませるのもいけないんだけど…あまりにも泣くわ喚くわでひきつけ起こすかと思ったから…」
アイスも取り敢えず冷凍庫行きとなった。僕のゴハンを横からガツガツとつまみ食いしまくる程の食欲だったからである。タクはその後コロンと寝、熱がぶり返すこともなかった。あの電話越しのパニックがウソのようである。
一時はどうなることかと…ほっと一息ついた。カナダでは発熱した赤ちゃんを冷凍庫に入れて凍傷を負わせたバカ男がいたそうだが、僕が冷凍庫に入れたのはアイスであったのでよかった。
翌朝も僕が起きた時にはタクは既に起き、元気に僕の携帯をガリガリと噛んでいた。
「わー。ちょっと、やめて、ね」
ガリガリ君アイスにすりゃよかった。同じ坊主頭だし。
問題:家に着くまでの間、僕はオドオドとどんなことを考えていたでしょう?
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