七五三の父誤算


娘・R(3才)の七五三であった。

写真撮影は先月に済ませていたので、晴れ着を着用する必要は別になかったのだが、嫁母が今日のためにドレスを作って来てくれるというのでそれを着ることになった。

嫁母は洋裁の技術があり凄いのだが、ちょっとセンスが古い。期待しつつも一抹の不安があったのだが、

「どうもどうも!!」

重い荷物をわざわざ抱えて来てくれた嫁母が披露したドレスは…

七五三
どーん。

'70年代の少女マンガのようなど派手どピンクなドレスであった。これを着れば誰でも林家パー子、みたいな。

「はいはい、じゃあ早速着て行きましょうね」

ちゃっちゃか嫁母と嫁に着替えさせられるRは既に泣きそうであった。

「これからお参りに行くのに緊張しちゃってるんだね」

と皆は言うが僕にはRの気持ちが痛いほど分かった。僕も七五三の時に袴を着させられたが、普段見慣れない服である故に

「こんな大袈裟で変な服、着たくないよう」

当時の僕も悲しくなったものである。ただ着た後のRは写真のようにわりと気に入ったようでニコニコしていたし、道行く人にも「あらカワイイ」と言われてたりしていた。(嫁母へのフォロー)

神社には僕と嫁とRと息子・タク(1才)、嫁母と前日から泊まりに来ている僕の母で向かった。タクは出発直前に寝てしまった。この前のRの幼稚園面接でもそうだったが、姉のイベント事には必ず寝てしまうタク。ラリホーの呪いでもかかっているのだろうか。

受付を済ませ、控え室でしばし待っていると名前を呼ばれたので本殿に入る。

「それでは始めさせて頂きます。最初に太鼓を鳴らします。ちょっとお子様がびっくりしてしまうかもしれませんが…」

若い神主が厳かに言い、ドーン、ドーン、ドーンと太鼓を打つ。隣に座っているRを見るとコチコチに緊張していた。ああそうか、こないだの写真撮影のように泣いてしまうかもしれない。タクなら神主からバチを奪って自分で叩きそうだが…とヒヤヒヤしながら見守った。

しかしRは泣かずに最後まで見届けた。

「R、偉かったね。お前はいい子に育つよ」

「うん」

神主がつつ…とにじり寄り、破魔矢やお守り、千歳飴などを渡してくれた後、

「これは七五三メダルです」

唐突に日本神道の伝統からかけ離れた、むしろ幼稚園っぽいアイテムが登場したので、初めてRがニッコリ笑った。上の写真で首から下げているのがそうである。八百万の神様も粋なことをされる。

これで全てが終了したので退出しなければならなかったが、僕は祭壇などを撮影したかったのである。しかし出来なかった。

「あのー。中を撮影していいですか」

と申し出たところ

「そうはい神主!」

と怒られたので…と言うのはウソである。厳かな雰囲気に呑まれて言い出せなかったのであった。

帰り道、僕らの他にも七五三参りの家族連れを多数見かけた。七五三の儀は昨日今日で多数の子供達に執り行われたであろう。愛子さまも七五三のルーツであるといわれる「着袴(ちゃっこ)の儀」を執り行われたという。

子供だけではない。僕も実は社会の窓が開けっ放しだったのを帰り道に今更ながら気付き、厳かにしかも誰にもばれないよう速やかに執り行った次第である。

チャックの儀。



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