2006年11月08日
髪は死んだ
娘・Rが3才になったのでもうネット上には写真を出さないと決めていたのに、つい出してしまいたくなる身勝手な親父を許しておくれ。
「Rの髪を切ってもらいに美容院に行きたいんだけど」
と嫁が言ったのがきっかけだった。Rの髪は既に肩よりもずいぶん下に伸び、前髪もうざったそうに見えたので僕も賛成した。
「で、どれくらい切るか、どんな髪型がいいか、あなたに聞こうと思ってね」
「ピノコだ!」
僕は即答した。ピノコとは手塚治虫の漫画「ブラック・ジャック」のキャラである。うちにはピノコのコスプレ服があり、
こないだハロウィンの仮装パレードにはそれを着せて参加したのだが、もうRにはだいぶ小さくなってしまい、来年はおそらく着れない。それでどうせ髪を切るなら髪型もピノコに合わせ、最後のコスプレということで記念写真を撮っておきたい!と考えた次第である。
「じゃあこんな感じで頼んでくれ。ボブヘアだね」
嫁にピノコの絵を見せてからRを美容院に連れて行かせた。僕は息子・タク(1才)と留守番である。ピノコのコスプレ抜きにしても、ボブヘアというのは小悪魔的であり大正時代のモガが醸し出したハイカラモダンな感じもありとても好きだ。
そんな髪型で駄々をこねられたらお父さんはもう白い壁に「堕天使」って書いて、デカダン酔いしれ面白おかしく暮らしてしまうかもしれない。
髪の毛を切られるのがイヤで泣いてなければいいけど…と心配半分期待半分で待っているが
「たらいま~」
Rは明るい声で帰って来た。
「おかえり~。さあ見せてくれ君のピノコを」
と駆け寄った瞬間ひっくり返そうになった。何故ならば、帰って来たのはピノコじゃなくて…
ちびまる子だったあああ!
しかも実写版!
2時間前は普通のRだったのに、この変わり様って一体。(キートン山田風)
「よ、嫁ーッ!ど、どうしてこんなこんなこんな…あっちょんぶりけーッ!」
「いやー。肩にかかるぐらいのボブヘアって言ったんだけどさ、『この長さだと髪が外に跳ねてしまうんですよ』って言われてね」
「はあ」
「それで、じゃあもう少し短くていいです、って言ったらあれよあれよという間にこの髪型に」
こんなおかっぱになってしまっては、タクも坊主頭だし、うちの子達は大正時代のモガどころか戦時中の疎開した子供みたいだ。
「おのれ美容師。Rの髪を無残に切った償いに腹を切らせてやる」
すぐさま怒鳴り込みに行きそうになったのだが、
ちびまる子を見る我が家のまる子…なんだか可愛い。それに本人も
「Rちゃん、ちょっきん、ってしてもらったの」
わりと気に入ったようでニコニコしている姿が愛くるしい。だから…まあ…いいか。ラストピノココスプレの野望は遠ざかってしまったが、また少し髪が伸びればいつかできる。そう思い直して
「美容院…おそろしい店!何がカリスマ美容師だ。何がビダルサスーンだ…」
Rがコスプレ出来る髪になるまで臥薪嘗胆するのであった。
ビダルサスーン。カミングスーン。
エンピツ投票。