アイスクリーム。ユースクリーム。

娘・R(3才)のハナタレは薬が効いてるのかだいぶ治まったので、息子・タク(1才)共々光が丘の児童館で遊ばせた。

その帰りに昼飯を食った時、ご飯の度にRが薬をじっと我慢して飲んでいる姿に心を打たれ

「偉いね。ご飯の後アイスを買ってやろう」

アイスより甘甘になってしまった僕。

「ショッピングセンターの中に、いいお店があるよ」

嫁の案内で行ってみると、そこはケーキもソフトクリームも売ってるという、とある洋菓子店のコーナー。ショーウィンドウにはたくさんのソフトクリームの見本が飾られていた。ていうかアイスじゃなくてソフトクリームじゃん。

「あっ。あいすー!」

しかしRはOKらしいのでこだわらないことにした。店員はおばちゃんがひとり。ではメニューナンバー「4」の、可愛いトッピングがされたものを注文しようとしたら、タッチの差で他の親子連れに先を越された。彼らはアイスではなくバースデーケーキを注文しているようで、少し時間がかかりそうだった。

「私、ちょっと別のところ見てくるわ」

嫁はタクの乗ったベビーカーを転がしてパン屋に行ってしまった。僕らの後ろにソフトクリームを買いに来た客の列が出来始めた。

「すいません、ちょっと時間がかかりそうなんで~」

おばちゃんが僕らに声をかけると、後ろの待ち客は皆ゾロゾロと去ってしまった。しかし僕らはどうせ嫁を待たなければならないし、Rは

「わあ~。きれいねえー。あいすいっぱいだねえ~」

ウィンドウを眺めてご機嫌なのでのんびり待つ。

「すいません、時間かかります~」

おばちゃんはもう一度言った。

「いや、いいですよ」

どうやらチョコプレートにホワイトチョコで名前を書かなければならないようだ。3枚プレートを持ち、ドタバタとカウンターの中を走り回る。何故3枚も必要なのだろうか。ケーキ売場とソフトクリーム売場をひとりで捌くのはいいが、たった1件のケーキオーダーで麻痺してしまうなんて。ひとり修羅場ってるおばちゃんをぼんやりと眺めていたが、ふとRに視線を落とすと…

ソフトクリーム見本のウィンドウにべったり貼り付いてガラスをべろべろ舐めておった。ぎゃあああ!

「R、舐めちゃダメ!もうちょっとだから、ね」

ガラスをハンケチで拭いていると

「ああああすみませんすみません、時間かかってしまって~」

かなりテンパった感じになって来たおばさんがようやく飛んできた。

「すいません、ウィンドウ汚しちゃって」

「いえいえいいですよ。本当にお待たせしまして…あ、何番ですか。4番ですか。はい、すいません」

にょにょにょっと手際よくソフトクリームを捻り出し、トッピングをぱぱっとかけて渡してくれた。しかしその後バースデーケーキの客に

「プレート1枚でいいって言ったのになんで3枚なんですか」

と言われガビーンとなっていた。大丈夫かこの店。

「えへへ…あいす、おいしー」

そばにベンチがあったのでRを座らせて嫁を待っていると

「あはは、パン屋にはまっちゃって。私パン屋大好きだからさー」

Rが半分以上ソフトクリームを舐め終わったぐらいのトボけたタイミングでようやく帰って来た。

「あ、Rちゃん、溶けて手に垂れちゃってるよー」

嫁が溶けて垂れてきたクリームを舐め始めた。まるで息を切らした犬のようにそれはもうべろべろと舌を出して。

…なんかこう、非常にエロティシズムを感じてしまった。随分見慣れたはずの嫁の姿。それこそ何百回と読み返したドラえもんのマンガのように見慣れた嫁なのに、非常にドキドキしてしまっている。

「非常にエロイからよそでべろんべろん舌を出さないほうがいいよ」

と嫁にやんわり言おうとしたが、

「エロイと思う奴がエロイんだ」

と返されて墓穴を掘りそうなので、ヨダレを垂らして見ているしかなかった。決してソフトクリームが舐めたいわけではなく。むしろ舐めて欲しいわけで。

そんなアイスる嫁にソフトクレーム。なんつって。

買ったお店のカウンターにはいつの間にか

「ソフトクリーム機械調整中」

との看板が出てて、おばちゃんはまだ修羅場っていた。大丈夫かあの店。


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