ファーストケツプリ歩き

息子・タク(1才)がフゴフゴとテーブルに捕まって立っていた。

「捕まり立ち」が出来るようになり、やがて捕まらずに自力で立てるようになっているのだが、まだ下半身が安定せずヘコヘコへっぴり腰を振る。その腰の動きはまるで僕が嫁を襲っている時のそれを見ているようで、とても他人とは思えぬ。あ、息子か。

歩けるようになるのはまだ先のことであるよ…と思っていたのだが、

「あっ。ちょっとちょっと。歩いた!」

「うをーホントだ!1歩、2歩、3歩!」

いきなりヨチヨチプリプリと腰を揺らせながら歩き出したので思わず嫁と絶叫してしまった。タクは4歩目でペタンと尻餅を付いて得意げな顔。

「うわー。ビデオで撮りたい!」

「よっしゃー。このデジカメ動画で」

「タクちゃーん。もう1回あんよできるかな?」

子供が歩いただけで親は空中浮揚してしまいそうな勢いで浮かれまくった僕らは、カメラを構えて決定的瞬間を狙う。するとタクは

「んふー。んふー」

これもまた僕が性的に興奮した時の鼻息に似た唸り声をあげ、再び3歩ほど歩いたではないか。

「タクー!歩けー!歩を進めると書いて進歩と読むんだー!」

「あなた、撮れた?」

「ばっちり」

タクの人生の物理的な第1歩を収めることが出来た。正確には第4歩ぐらいからだが…。子供の成長を喜ぶこと。親になって良かったと思うひとときである。タクよ、これでお前も東京ウォーカーだ。僕なんか栃木ウォーカーだったぞ。歩けど歩けど田んぼだけ。しかしその感動のひとときを黙って見ておれない者がいた。

「こんどは、Rちゃん」

娘・R(3才)である。僕の腕を引っ張り「私もカメラに撮れ」と言うのである。

「いや、今はタクのあんよを撮ってたからね…」

「だめー!Rちゃんも!Rちゃんも!」

僕と嫁がタクばかりにチヤホヤしていたためであろう。

「私だって注目を浴びるのよ!見ていて下さい、紫のバラのひと…」

とばかりに俄然気合を入れまくって

「あべれべれべー」

Rオリジナルの滅茶苦茶な創作ダンスを踊りまくるのだった。動画を撮った後

「みしてー」

自分の映像をしっかりチェックするのも忘れない。

タクが進歩する息子であるならば、Rは譲歩しない娘である。


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