案ずるよりまぐわうが易し

嫁のお尻を撫でていたら

「ちょっと何やってんのよ!触らないでよ!」

まるで僕が電車の中の植草教授であるかの如く怒られた。

「いいじゃないか減るもんじゃなし。今夜どうよヌフフ…」

「だめ!私は今面接のことで気が立ってるの!」

立ってるのは僕も同じだが…。嫁の言う面接とは、数日後に迫った娘・R(3才)の幼稚園面接のことである。

「嫁、もうちょっと落ち着いて…」

「面接終わるまでまぐわい禁止!」

「なんでそうなるんだよー!」

キリスト教を広まらせないために海外交通を禁止しました。面接があるために夫婦交渉を禁止しました、ってお前は江戸時代か。夫婦は常にエロ時代で行きましょうよ、と反論するのだが

「私はね、今、面接のことしか頭にないの!そんなことしてる余裕はないの!」

マジで核実験する5秒前、ってな感じの北朝鮮みたいなテンパり具合。

「テンパって視野が狭くなると、思わぬところでコケるものだよ。ここはもっとゆとりを持って僕と肉体の面接を…」

「面接が終われば心も体も大開放されるわよ!」

大開放ってアナタ…され過ぎても困るんだけど。反動でエブリバディカモンカモンみたいなストリートビッチになられても困る。

という訳で嫁の心配性にすっかり僕もそんな気分ではなくなってしまった。僕も不安がないと言えば嘘になる。しかしもう自然体で面接に望むしかないではないか。

親の欲目なのかも知れないが、Rはトロいけれども素直な子である。ちょっとオマセな子は先生がお遊戯を教えても照れてやらない場合があるが、Rは大喜びで歌って踊る。教える側にとっては扱いやすい子であると思う。

Rが面接で緊張して何も話せなくても、Rはこの幼稚園で開催されている未就園児教室に参加しているので、先生方も普段の姿を見てくれていて、それを加味してくれるのではないか…あくまでも希望的観測なのであるが。どのみち親がガチガチだとRもガチガチになってしまうだろう。

面接当日は、幼稚園に並んだ者順から面接が開始されるので、僕が明け方から並びできるだけ早い順番を確保することになっている。そして嫁がRの身支度をさせて僕とバトンタッチし、嫁とRが面接に赴く。親はどちらかが出ればよいのだ。

ただこの調子だと万が一落ちてしまった場合、嫁が責任を全部ひとりで背負い込んでしまう恐れがある。両親で出席しても問題はないので、これは僕も一緒に出た方が良いのかなあ…、などと考えている次第である。

嫁が面接に向けて頑張っているのをただ口を咥えて見ているだけで、ただまぐわいを求めるのみの僕では、嫁との愛の営みも崩壊してしまうではないか。無力な男になってはいけないのである。

苔のむすまでに 愛し合うはずの二人が
予定調和の中で 離れ離れになる
何も出来ないで 別れを見ていた俺は
まるで無力な俺は まるでまるで高木ブーのようじゃないか

俺は高木ブーだ まるで高木ブーだ
俺は高木ブーだ まるで高木ブーだよーん

元祖高木ブー面接。


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