2006年10月13日
野蛮なモーニング娘。
「あなたあん。起きてえん」
「んんーまだ眠いよ…」
「ほら遅刻しちゃうぞお。ちゅ」
「あ、変なところが先に起きちゃった」
「いやあん」
「ぐへへへへへ」
「ああんお鍋の火がつけっ放し~」
なんてことをしていた新婚時代も今は昔、もう嫁は絶対そんなことをしてくれなくなった。人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり。いわんや新婚生活など1、2年がいいところである。
尤も今の嫁はそれどころではなく、朝から家事に追われ、息子・タク(1才)も年寄り並みに早く起きている。ラブラブがなくなり、バブバブが取って代わったというわけである。ガーガー寝ているのは僕と娘・R(3才)だ。
そんな訳であの甘い目覚めをもう一度と願う僕は、嫁に代わりRが優しく起こしてくれる日を夢見て寝床に着く毎日であった。
「お父様、起きて」
「んんー。まだ眠いよー」
「遅刻いたしますわよ。ちゅ。まあ、お髭が痛うございます」
「フフフ。お姫様をキスで起こすのは僕の役目なのに、逆になっちゃったな」
「まあ。お父様ったら。今コーヒーをお入れしますわ」
「ああ。ブルーマウンテンを頼むよ。苦いヤツを。人生のようにね…」
「はいお父様。あ、ばあや。お千代ばあや。お父様のお着替えを」
こんな娘いねーよ。誰だよお千代って。しかし夢見るのは自由なので、えへへと枕に涎を垂らしていたのだが、やはり現実は厳しいものであった。
今朝はそんな理想の目覚め程遠いものであった。おはようのちゅーどころかRに腹を立て続けに2発思いっきり叩かれた。しかもタクも隣でベチベチ2発。もう痛いのなんの。
「君たち、いつもオモチャの奪い合いしてるくせに、こういう時は団結するんだね…」
それでもゴロゴロしていたらRが突然
「かじりんー!おきろー!」
僕の名を呼び捨てにして怒鳴ったのである。これで面食らってすっかり目覚めてしまった。というのも、普通Rやタクには「パパ(もしくはお父さん)だよー」と言っているので、面と向かって「お父さんの名前は『かじりん』ですよ」とキチンと教えたことがなかった。だから僕や嫁の名前など言えないと思っていたのである。
ちょうどRの幼稚園入園のための面接が近付いており、面接では両親の名前を質問されるらしい、という噂を聞いたので、
「そういやまともに教えたことがなかったね」
やばいよやばいよと嫁と話していたところだったのに、いきなり僕を呼び捨てにして叩き起こすとは。
「一体いつの間に覚えたんだ?」
僕は首をかしげていたが、
「栃木に帰ってた時に、あなたのお母さんがいつもあなたの名前を呼んでたでしょう?それじゃないかな」
「それだ!」
多分嫁の言うとおりだと思う。子供は思わぬところを吸収するなあ…。ともかくこれで僕のバラ色の目覚めの夢は消し飛んだ。
名前を呼ばれるのは、呼び捨てでも面接が終わるまではそれでもいい。ただバシバシ叩くのは勘弁して欲しい。本気で痛い。
太平の眠りを覚まされ如何せん。たった4発で朝も眠れず。
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