2006年10月12日
ファーストキスはレモン牛乳の味
故郷栃木に帰省した時、楽しみにしていたことがあった。
それは「レモン牛乳」をゲットすることである。画像では「関東・栃木レモン」と表記されているがそれは後述する。
レモン牛乳は関東牛乳という栃木県宇都宮市の企業が製造していた、60余年の歴史を持つ飲み物である。牛乳にレモン果汁を入れると分離してしまうのでは?という心配はいらない。
「無果汁」だからである!この辺がお約束のツッコミどころであり、お茶目な飲み物として親しまれてきた。味は半端なく甘い。レモンの味などしない。ミルクセーキの味に近い。そして色は黄色4号をぶちこまれた真っ黄色である。後に100%生乳(なまちちではない)でないと「牛乳」を名乗れなくなったため「関東レモン」と改名になった。
2004年にはレモン牛乳存続の危機が訪れたことがある。関東牛乳が社長死去により廃業したのだ。すわレモン牛乳滅亡か、と危惧されたが、その後栃木牛乳という企業が名乗りを上げて製造方法を受け継ぎ、「関東・栃木レモン」として復活し今に至っている。
以上、プロジェクトXのネタにも出来そうな波乱万丈な歴史を持つレモン牛乳。僕が子供の頃は、宇都宮市では至る所で売っていたのだけれども、僕の地元である栃木市近辺では売っていなかったのである。宇都宮に行くたびに、当時はビン入りだったレモン牛乳を買って来ては学校のクラスの奴に
「これ見たことあっけ?レモン牛乳」
「なにそれ知んね。さすが宇都宮は都会だべ。すげんじゃねん」
と見せびらかしてウケを狙ったものである。
で、最近は宇都宮に行かなくともウチの実家付近でも売っているとの情報をネットで得たので、是非帰郷した際に買いたいと思っていたのである。
情報どおりレモン牛乳をゲットし、よく冷やして実家で飲んでみた。およそ20年ぶりぐらいだろうか。ぐびぐびとのど越しを味わった。
「ああ、この味だよ。僕の青春時代の味…甘過ぎる味、歯医者の診療室みたいな変な臭い…嫁、飲んでみる?」
「絶対イヤ」
終始怪訝な顔をして見ていた嫁は決して飲もうとしなかった。しかし齢60にして好奇心旺盛は僕の母は
「それ何?飲ましてくれっけ?」
とせがむので飲ませてみたら
「あ~コレ思い出した。レモン牛乳でしょ?高校の購買部で売ってた!懐かしいねえ」
なんと、母はレモン牛乳の存在を知っていた。母の高校は県南部である。僕も学校は違うが同じ県南の高校出身である。僕の高校では売っていなかったし、前述のとおり昔は県南部では売っていないと思っていた。しかし母が高校生の時(およそ45年前)は県南の高校でも売っていたのだ!
なんという衝撃だろう。栃木県人かつレモ牛(吉牛ではない)マニアでないと何がなんだかサッパリ、といった感じだろうが、県中央部の県都・宇都宮と県南部・栃木では距離も離れていて風土もだいぶ違う。東京で言えば千代田区(皇居がある)と八王子市高尾(嫁の実家がある)ぐらいの差がある。
例えれば「実は江戸時代、日本に野生のパンダがいたんだよ」というの聞くのと同じぐらいの驚きなのである(パンダの話は嘘:念のため)
母にも歴史あり。まさかセーラー服姿でレモン牛乳を飲んでいた女子高生時代があったとは…想像できない。というかしたくない。と、母から目を逸らすと娘・R(3才)がキラキラと好奇心溢れる目でこちらを見ていた。
「ぱぱ、それなんだ?」
レモン牛乳を飲みたい、と顔に書いてあった。こんな幼児に飲ませるなんて、乳児にドクターペッパーを飲ませるぐらいの愚かなことであると思い、
「ボクドラレモン~」
とウィットに富んだ台詞で切り返してみたが、幼児にお洒落なエスプリは通用しなかった。
「ぱぱ、それなーんだ?」
「うーん。今飲んじゃうと寝る前におしっこいっぱいでちゃうよ~。パパとトイレ行くか?」
「だめっ」
あまりトイレに行くのを好まないRの習性をうまく利用して切り抜けた。やれやれだぜ。
おしっこしーしーレモン。YEAR!
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