東京ネダリンピック

僕の母が娘・R(3才)に「めばえ」を与えていった。

このようなアニメ・キャラ・オモチャメーカーとのタイアップ記事満載の小学館系雑誌を買い与えたことは、やまだかつてなかった。まだ早いと思っていたので。

今までは主にシンプルプルプルな絵本を買ってやったりしていた。ついでに父、つまり僕用のオッパイプルプルな絵ろ本も買ったりして。

「うわー。いっぱいいるよー。アンパンマン、(クレヨン)しんちゃん、ドラえもん、トーマス…」

Rは表紙に載っているキャラクターの名前を次々と列挙し、喜んでいた。実はもうこういう雑誌を与えるに充分な時期が来ていたのかも…と考えかけたが、

「ねえパパー。Rちゃん、これ、あそびたいの。これもあそびたいの。これも…」

どっちゃりとページを割いているオモチャ広告記事を見ながら次々とおねだりを始めたので、やっぱり目の毒だったと思い直した。

「だめです。そんなにいっぱい買ってあげられないよ」

まだお尻の青いお前には分からぬだろうが、手に入れられる物など、文字通りほんの一握りなのだ。お前が絵本を見てねだるように、僕だって絵ろ本を見ながら

「僕、このおっぱいと遊びたいの。このおっぱいも揉みたいの。あ、これも…」

むしゃぶりつきたい欲望を抑えながら、薄い嫁の乳で我慢しているのだ。いや、近頃は嫁ですらなかなか触らせてくれぬ。

「R、我慢することを覚えないとね」

「いやーっ。あそびたいのあそびたいのー!」

しかしRには理屈は通じなかった。むしろ僕が嫁に

「あなた、がまんしなさい」

「いやーっ。やりたいのやりたいの」

と駄々をこねる僕自身の仕草と重なり、ああ蛙の子はフロッグであることよと溜息を付いたのだった。

「じゃあ…今度のクリスマスにひとつだけ買ってあげよう」

「うん」

不憫に思えた僕は

「どれがいいか、ひとつ選びなさい」

「えっとねー。これと、これと、これと、これと…」

「あの…君は『ひとつ』という意味を分かってるかナ?」

しばらくRのないものねだりに付き合わされる羽目となってしまった。僕も嫁におねだりしてみようかな。

ない乳ねだり。


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