百 花 の そ よ 風    マネージャー余話  吉沢武久

第 32 回   桜 草   2025年3月1日

      3月になりました。もうすぐ(いや、すでに?)アトリエ作者がそわそわし始めます。今年も桜が咲き出す季節となりました。

    各地で桜の開花予報が報じられたり、桜前線も動き出すことでしょう。そんな日本ですが 「我が国は 草も桜を 咲きにけり」

    と江戸の俳人、小林一茶が詠んだように、草に桜が咲くのです。それが今回百花に取り上げた桜草です。

     桜が咲く前に、桜の花のような小さな花をつける多年草です。古くは室町時代の中頃から栽培されていた、という記録が残

    っているそうです。北海道から九州まで、日本の野山に自生していましたが、野生の群落を目にすることは少なくなっています。

    大きな自生地として残っているのは、埼玉県の荒川沿いにある田島ヶ原だけです。

                                     
     
     桜弁、丸弁、梅弁、細弁・・・桜草は品種改良で、たくさんの品種が産まれています。栽培が盛んになったのは江戸時代です。

    徳川家康が、鷹狩りに行った荒川の湿地帯に咲いている桜草の美しさに魅了され、江戸城に持ち帰り、その栽培を奨励したこ

    とがきっかけと伝えられています。その後、武士階級で愛好家のグループが結成され、品種改良にいそしみ、400種類ほどの

    品種が作り出されました。色もピンクに加え、赤、白、紫、絞り等が登場しました。

     そんな人気が背景にあって、冒頭で紹介した小林一茶の句が産まれたのかも知れません。現代の俳人では久保田万太郎

   が詠んだ俳句に 「 このところ いいことづくめ 桜草 」があります。このところいいことの少ない世界や日本ですが、万太郎さ

   んのいいこととは何だったのでしょうか。桜草の花言葉、「初恋」 「憧れ」 「純潔」あたりから想像してもいいのかな・・・・

                        

     桜の開花にそわそわする作者ですが、桜草とは一時、距離を取っていた時期があります。もう10年以上前になるかと思い

   ますが、顔のあちこちに湿疹が現れました。家庭用軟膏で治るかと思っていたのですがうまくゆかず、近所の家庭医を受診

   したところ、原因は桜草であることが判明しました。桜草にはかぶれる成分があるのです。軟膏と飲み薬が処方され、医師

   からは帰宅したら桜草を処分するようにと言われたのこと。泣く泣く、桜草をプランターから引き抜いたそうです。

    でも、現在は品種改良が進み、かぶれない桜草も出回っているようで、水彩画教室のお手本として我が家のベランダにも

   再び桜草の鉢が加わっています。


                      

                                                      
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