百 花 の そ よ 風    マネージャー余話  吉沢武久

第 36 回   ア ザ ミ    2025年7月1日

      気温30度を超える真夏日が続いている6月下旬です。梅雨明け宣言を出してもいいのに、気象庁

   はかなり慎重ですね。もう夏ですよ。そんな6月下旬から7月にかけての百花にアザミを選びました。

     アザミは葉にトゲがあり、採取する時とても痛い目にあうことがあります。野バラの時と同じです。

   このアザミ、世界に300種、日本に100種もある多年草の野草です。たくさんの種類があるアザミ

   ですが私が採取してきてアトリエ作者が描いているのは、野アザミです。漢字で書くと「薊」です。

   草冠に「刺」ですが、アザミの葉が魚の骨に似ているから「薊」となったとか・・・本当かな?ともあれ

   とても魅力的な花なので、日本ではドイツアザミという園芸種が開発されているそうです。

                                                
     
    この野アザミ、昨年までは豊川(トヨガワ・・・豊橋市内を流れる一級河川)の堤防で採取していまし

  た。今年も咲く時期になったので、行ってみたところ、全くありませんでした。堤防の補強工事が施工

  されて、アザミは根こそぎ失われてしまったようです。今年はアザミを作者の絵のモデルとして採って

  行けないなぁ、と思っていました。ところが運良く採取場所が見つかったのです。トップページで作者

  が述べていた賀茂菖蒲園の植え付け体験に行った時、菖蒲園の近くの野原に、たくさん咲いてい

  たのです。持ち帰ったアザミをモデルにして描いた作品が、7月の部屋の「秘めたる夢」です。

   アザミというと小学生の時に歌った「あざみの歌・・横井弘作詞、八洲秀章作曲」を思い出します。

  担任の若い男の先生が「これは悲しい歌なんだよ」と教えてくれましたが、何が悲しいのか分かり

  ませんでした。今調べてみると、昭和20年に復員してきた18才の横井が疎開先の下諏訪八島高

  原で野に咲くアザミの花に、思いを抱く理想の女性像をダブらせて綴った歌詞のようです。成就し

  なかった恋?片思いの恋? { 秘めたる夢を一筋に・・・・あざみに深きわが想い・・・いとしき花よ

  汝はあざみ 心の花よ 汝はあざみ・・・かおれよせめて わが胸に }なるほど悲しい、納得です。


                              

    あざみの歌と似たような心情を俳人、正岡子規が句にしています。

    世をいとふ 心薊を 愛すかな   正岡子規

  正岡子規といえば「柿食へば 鐘が鳴るなり 法隆寺」という超有名な句がありますが、6月29日

 TV放送の笑点で、初めて知る正岡子規の紫陽花の一句がありました。

    紫陽花や きのふの誠 けふの嘘  正岡子規

  今年は梅雨が短かったため、紫陽花にとっては気の毒な年となりました。作者も、いつもの年より

 紫陽花を描く時間が少なかったように思います。でも、まだ梅雨明けしていないので、紫陽花をこれ

 から描くかも知れません。梅雨と紫陽花が大好きな作者ですから。
 

                      

                                                      
    第1回 薔薇      第2回 菊から百合へ      第3回 向日葵     マネージャーの独り言へ    トップページへ

     第4回 野菊        第5回 野ブドウ           第6回 椿     

     第7回 雪中花        第8回 チューリップ          第9回 タンポポ

     第10回 クレマチス     第11回 紫陽花            第12回 ピエール・ド・ロンサール      

     第13回 木槿        第14回 ぶどう             第15回 萩  

     第16回 秋明菊       第17回 紅葉             第18回 サイネリア     

     第19回 苺(いちご)    第20回 パンジー           第21回 桜

     第22回 スズラン      第23回 ドクダミ           第24回 ヒメシオン

     第25回 朝顔        第26回 ルリマツリ          第27回 コスモス

     第28回 ノイバラ      第29回 ポインセチア        第30回 山茶花

     第31回 梅          第32回 桜草             第33回 藤

     第34回 花水木       第35回 昼咲き月見草