百 花 の そ よ 風
マネージャー余話 吉沢武久
第 41 回 石 蕗
2025年12月1日
12月、師走に入りました。2025年もあと1ヶ月を残すのみです。今年百花のそよ風は1月の山茶花
で始まりました。その山茶花、豊橋市にある医王寺が知る人ぞ知る山茶花寺として有名です。昨年は
12月半ばに訪れたのですが、猛暑の影響で花は終わっていました。その教訓で今年は11月後半に
行きました。「さすがに、早いんじゃない?」と言う私に「賭けてもいい、絶対に咲いている」と言うアトリ
エ作者の気迫に押されて、行くことにしました。賭けはしませんでしたが、作者の言うとおり、きれいな
山茶花に出会うことができました。今回のアトリエ作品に紹介している山茶花は、その時にスケッチし
てきたものです。前置きが長くなりましたが、2025年最終月12月は石蕗です。
前回の吾亦紅(われもこう)、9月の百日紅(さるすべり)と同様に、石蕗も読める人そしてその花を知
る人は、少数派と思います。「つわぶき」と読みます。「蕗」は食用のフキやフキノトウの蕗なので、読め
ますが、石をつわとは、まず読めません。石蕗の命名はその葉にあるようです。つやつやした葉を持つ
蕗、艶葉蕗(つやはふき)から転じた説が有力です。また石や岩の間にも咲くことから、石という字が充て
られたのでしょう。「困難に負けない」という花言葉は、そのイメージ通りです。
初冬に咲く日本原産の多年草ですが、寒い北海道や東北にはなく、福島県以南に広く分布し、沖縄県
や台湾でも見られるそうです。余談ですが山陰の小京都として有名な津和野(つわの)は、「石蕗の野」
が由来だそうです。
石蕗は俳句の世界では冬の季語です。多くの俳人が多くの句を詠んでいます。
{ 鞦韆(しゅうせん=ぶらんこ)は 漕ぐべし 愛は奪うべし } と有名な句を詠んだ俳人、三橋鷹女は
石蕗で次のよう句を残しています。 { つわぶきは だんまりの花 嫌いな花 }
「嫌い」と言い切って、逆説的にその魅力を伝えていると評されています。私は石蕗にもう少し穏やかな
イメージを持っています。 { 静かなる 月日の庭や 石蕗の花 高浜虚子 }
私の母の故郷は新潟県長岡市です。子供の頃、何度も行っています。その長岡市で晩年を過ごし、亡
くなられた江戸時代後期の僧侶であり、歌人でもあった良寛さんは、石蕗を短歌に詠んでいます。
山里の 草のいほりに 来てみれば 垣根に残る つはぶきの花 この歌と関係あるかどうかは分か
りませんが、長岡市では毎年10月から11月にかけてつわぶき祭りが催されています。母の故郷、長岡の
つわぶき祭りにいつかは行ってみたい、という思いが湧きました。
今年もそよ風のアトリエに幾度も訪れて下さりありがとうございました。良いお年を・・(ちょっと早すぎ?)
第1回 薔薇
第2回 菊から百合へ
第3回 向日葵
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第4回 野菊
第5回 野ブドウ
第6回 椿
第7回 雪中花
第8回 チューリップ
第9回 タンポポ
第10回 クレマチス
第11回 紫陽花
第12回 ピエール・ド・ロンサール
第13回 木槿
第14回 ぶどう
第15回 萩
第16回 秋明菊
第17回 紅葉
第18回 サイネリア
第19回 苺(いちご)
第20回 パンジー
第21回 桜
第22回 スズラン
第23回 ドクダミ
第24回 ヒメシオン
第25回 朝顔
第26回 ルリマツリ
第27回 コスモス
第28回 ノイバラ
第29回 ポインセチア
第30回 山茶花
第31回 梅
第32回 桜草
第33回 藤
第34回 花水木
第35回 昼咲き月見草
第36回 アザミ
第37回 キキョウ
第38回 サルスベリ
第39回 千日紅
第40回 吾亦紅