百 花 の そ よ 風    マネージャー余話  吉沢武久

第 35 回   昼 咲 き 月 見 草    2025年6月1日

      昼咲き月見草、この花に初めて出会ったのは、10年以上も前のことになります。アトリエ作者お気に

   入りのスポット浜名湖ガーデンパークでの出会いです。浜名湖ガーデンパークは、2004年に開催され

   た浜名湖花博の会場を整備してできた静岡県県営の大規模公園です。我が家から車で1時間程、真夏

   と真冬を除けば、月に1〜2度出かけています。そして、初めて訪れたとき、入場門前の5メートル四方

   ぐらいの花壇一杯がこの花に埋め尽くされていたのです。
   
    その見事なピンクの花たちの集団に圧倒されました。初めて見る花に「 これ何?」と作者に問うと

   「 昼咲き月見草よ」とのこと、花を描く作者は当然ながら、知っていました。

                                                 
     
    「昼咲き月見草」と名付けられたのは、夜に開花して朝にはしおれてしまう一日花である月見草に対

  して、昼に開花する花だからです。さらに、月見草は白い花であるからして、ていねいに「桃色昼咲き

  月見草」と呼ぶこともあります。ここで、えっ月見草って黄色い花じゃないんですか?と疑問に思われる

  人のために、お答えします。月見草の花の色が黄色と勘違いするのは、太宰治が悪いんです。太宰は

  富岳百景という作品の中で、月見草を次のように描写しています。

   { 私の目には、いま、ちらとひとめ見た黄金色の月見草の花ひとつ、花弁もあざやかに消えず残った。

    3778メートルの富士の山と、立派に相対峙し、みじんもゆるがずなんと言うのか、金剛力草とでも

    言いたいくらい。けなげにすっくと立っていたあの月見草はよかった。富士には月見草がよく似合う}

  と月見草の色を「黄金色」と表現しています。でも、この花は月見草ではなく、待宵草か大待宵草のよう

  です。待宵草が出たところで、間違いをもう一つ。美人画を描き詩人としても活躍した竹久夢二が作詞

  した「宵待草」という歌があります。その歌詞 「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ」とあり

  ます。でも、宵待草という花はありません。言葉の響きからあえて待宵草を宵待草と呼んだのかも知れ

  ません。待てど来なかった人は、竹久が失恋した19歳の秋田美人だったようです。

                               

    話を昼咲き月見草に戻しましょう。浜名湖ガーデンパークの見事な群落で咲いていた昼咲き月見草

 はその後場所が変わりました。そして残念ながら2〜3年後には姿を消してしまいました。でも、我が家

 の畑では、ネットで購入した昼咲き月見草が毎年元気に花を咲かせます。切り採ってきて花瓶に活け

 ますが、夜咲くのもあれば、昼に咲き出すのもあります。

  梅雨時の花なので、花菖蒲、紫陽花、バラなどの作品をせっせと描く作者、最近は昼咲き月見草に

 まで手が回らないようです。仕方がないですね。
 

                 

                                                      
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