百 花 の そ よ 風    マネージャー余話  吉沢武久

第 16 回  秋 明 菊   2023年11月1日

   秋明菊は菊と名付けられていますが、菊の仲間ではなく、キンポウゲ科の多年草で、アネモネの仲間です。風に揺れ、儚げに

 咲く姿には、風情を感じさせる優雅さがあり、コスモスと並ぶ秋の花に違いありません。

  中国から古い時代に入ってきた帰化植物ですが、京都の貴船地方に野生化したものが見られます。これがキブネギクで秋明菊

 の別名となっています。

  京都と秋明菊、というとアトリエ作者と私には、一つの思い出があります。21年前、2002年10月末のことです。

                

   その2002年6月に、第一回のそよ風のアトリエを公開しました。残念ながら、当時使用し、データーを保存していたパソコンの

 故障で、4年分ぐらいのそよ風のアトリエが消えてしまいました。紙ベースで残っている資料に、第5回(2002年11月)の原稿が

 ありました。そこに京都で出会った秋明菊のことを、作者が描きコメントを付けたデーターがあったのです。

  そよ風のアトリエは、第一回から206回(2018年5月)まで、作者の作品を掲載し、コメント、エッセイ等全てを作者が担ってき

 ました。私がエッセイコーナーを任されるようになったのは、5年前からです。

 今回はその京都の秋明菊の作品と作者のコメントを再掲します。


                         

                           秋  明  菊  

 10月の終わり頃、小さな旅をしました。週末の京都はすでに紅葉が始まっていて、ほんのり色付き始めた木の葉が爽やかでした。

来週からこの場所は、観光客で溢れかえる、という話を聞き、紅葉狩りには少しぐらい早くても、ゆったりと散策できて良かったと思い

ました。訪ねる場所によっては、修学旅行以来ということもあって、長い時間の流れを経て、同じ場所に立っている感慨と不思議を味

わったりもしました。

 一ヶ月ほど過ぎた今、その時のスナップ写真を眺めながら、さて、一番印象に残っている場所はどこだったかしら、と思い巡らしてみ

たら、そこは名所とはほど遠い住宅街の一隅でした。

 有名なお寺に続く細道は、急勾配が多く、それでもびっくりするような高齢の方が、杖をつきつき一生懸命歩いているので、私たちも

ゆっくりと歩調を合わせて、目的地に向かっていました。その時ふと目にしたのが、秋明菊の群生だったのです。

 それは住宅地と地続きになった野菜畑とも花畑とも言えるような、何てことのない空間で、丈の低い木が4〜5本植わっていて、その

下でわっと咲いた秋明菊が気持ちよさそうに、風と戯れていました。

 少し上気した頬に同じ風を感じながら、私たちはしばらくその場所に佇んだのでした。旅の終わりの近づいたことを感じながら。

 いつかまたここに来ようね、と心で会話しながら・・・    ( 2002年11月)


                         

                                                      
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