百 花 の そ よ 風    マネージャー余話  吉沢武久

第 10 回   ク レ マ チ ス    2023年5月1日

  華やかに咲き誇った桜が散り終えた後に咲き出すのは、私の好きな藤の花です。ベランダで咲かせる努力をしましたが、何年

 経っても葉っぱのみでした。そのベランダに15年ほど前にやってきたのが、クレマチスです。

  アトリエ作者が作品のモデルとして、鉢植えで購入しました。付いていた花は、4〜5個ぐらいだったと思います。その時初めて

 この花がクレマチス、別名テッセンと知りました。

  北半球に広く分布していて、日本には16世紀(室町〜安土桃山時代)に渡来したといわれています。日本にも原種があって、

 19世紀(江戸時代)には、シーボルトによってヨーロッパに紹介されたカザグルマ(風車)という種類があるそうです。花弁の数が

 6枚をテッセン、8枚がカザグルマと呼ばれています。 つる性の植物でクレマチスという花名は、ギリシャ語の”ツル”という意味の

 クレマからきています。そしてそのつるが鉄のように固いので「テッセン(鉄線)」となりました。イギリスではつる性植物の女王とも

 呼ばれ、ガーデニングでも人気の花となっています。

                           

  我が家は14階建ての集合住宅です。南向きに位置したベランダでいろいろな花を栽培していますが、4〜5年前から分かって

きたことがあります。ベランダでは育たない、咲かない花や野菜があること(確かではありませんが、藤やコスモス、スイトピー等)

 ところが、クレマチスは購入した小さな鉢から大きな鉢に植え替えたところ、毎年成長を続け、最盛期?一昨年には、20個以上

の花を咲かせるようになりました。

  3年前、コロナ禍が始まった時作者に、講師応援メッセージ録画の依頼がNHKカルチャーからありました。そのメッセージ動画

の背景にちょうど満開に近いクレマチスを配置しました。それが作者の緊張を和らげ、応援メッセージのフォローとなりました。

  毎年成長を続けるので、一回り大きな鉢に植え替えようかと思っていました。ところが築30年を超えたマンションの大規模修繕

工事が計画され、昨年実施されました。クレマチスは南側ベランダから陽の当たらない北側に移動せざるを得ませんでした。台風

の強風にサラされて、今年で終わりかな、と思ったことも何度かありましたが、その都度復活して花を付けてくれました。さすがに

南から180度変化した北側への移動には耐えられないだろう、と半ばあきらめていました。

                       


  ペットロス、という言葉があります。家族同然に飼っていた犬や猫と死別することで、心や体に変調を起こす症状です。犬や猫の

平均寿命は約15年ぐらいです。我が家のクレマチスも同じぐらいの時を過ごしました。植物は言葉を発しませんが、生きています。

作者は花と会話すると言います。「ねえ、描いて描いて」と迫ってくるの、とか「描けるかい?」と挑戦してきたり、などとよく聞かされ

ます。4月から始まったNHKの朝ドラは、珍しく男性が主人公、植物学者の牧野富太郎博士です。ドラマの中でも植物に話しかけて

います。私には植物とやりとりする術はありませんが、畑などで話しかけることはあります。「元気に育つんだよ」「頑張れ!」などと。

  昨年秋修繕工事も終わり、クレマチスは元の南側ベランダに戻しましたが、今年咲いてくれるか心配でした。花や植物にも寿命は

あるのでしょうか?犬や猫の平均寿命と同じ年齢になっている我が家のクレマチスですが、9つの花を咲かせてくれました。最盛期の

半分以下でしたが、上品で綺麗な花でした。あと何年一緒にいられるか、クレマチスロスなんて日が来ないことを願っています。


                              

                                                      
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