百 花 の そ よ 風    マネージャー余話  吉沢武久

第 25 回  朝 顔   2024年8月1日

             朝顔に  つるべ取られて  もらひ水

    江戸中期の女流俳人、加賀千代女の句です。朝顔を見ると、先ず心に浮かぶのが、この有名な俳句です。夏の朝に開き

   昼過ぎには萎んでしまう花ですが、儚さは感じられません。むしろ元気で明るいイメージの花です。

    今月の百花にこの朝顔を選びました。10年振りぐらいになりますが、ベランダで種を蒔き、あんどん仕立てにして、育てて

   います。7月末に一輪花を付けました。薄い水色です。近年、ちまたで濃いブルーの元気な朝顔が、所狭しと一杯咲いてい

   るのをよく見かけます。あれは西洋朝顔で、生育が旺盛ではびこりやすく、他の草花の領域まで侵入していきます。

                                         
     
  私はそんな元気な西洋朝顔より、少し控えめな日本朝顔の方が好きです。日本朝顔といっても、日本原産ではなく、奈良時代

 に中国から渡来し、薬草として用いられたのが始まりとのことです。観賞用として楽しまれるようになったのは、江戸時代でいろ

 いろな品種改良がなされたようです。

  また、朝顔が渡来した奈良時代の歌人、山上憶良はその和歌の中で朝顔を秋の七草として詠んでいます。

     秋の野に 咲きたる花を 指折りて かき数ふれば 七種(ななくさ)の花

     萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花(おみなえし) また藤袴 朝がほの花

  でも、この朝がほは、加賀千代女が詠んだ朝顔ではなく、桔梗(ききょう)であろう、という説が有力です。

  現代の秋の七草には朝顔は入っていませんが、俳句の季語では夏ではなく、ちゃんと秋の季語となっています。

                                

   さて、我が家のベランダに目を移すと、あんどん仕立ての朝顔のツルが、毎日元気に伸び続けます。最初の一輪が咲いた後

 3日後にもう一輪咲きましたが、その後つぼみは見当たりません。ベランダでは花を付けない草花もあるので、少し心配ですが

 以前は手摺りに誘導した朝顔が毎朝咲いてくれたので、その再現を楽しみにしています。手摺りに誘導したといえば、ぶどうの

 デラウエアがここ数年実をつけてくれます。今年は特にたくさんの実がつきました。アトリエ作者は青い小さな実のうちから、毎日

 のようにスケッチしています。そして色付き始めると、あいつ、ヒヨドリと作者の攻防が始まるのです。2〜3個は食べられたかも

 知れませんが、今年は食べられる前に枝ごと切り採ってモデルにしている作者の勝ちのようです。今後ぶどうの絵が増えるかと

 思いますが、作品誕生までには、そんな裏事情があるのです。

                         
                                                      
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