酸っぱいブドウと酸っぱい胃液と甘酸っぱい人妻。

午前様になった翌朝、嫁に叩き起こされた。

「あなた、リトミック(お遊戯)教室お願いね」

そうだった。嫁は今日産婦人科に行かなければならないので
僕がR(2才の娘)を連れて行くことになっていたのだ。

頭痛と吐き気の完全な二日酔いでしばらく動けなかったが、嫁は
呆れてとっとと行ってしまった。誰のせいでもありゃしない。
みんなおいらが悪いのさ。身重の嫁を放って、僕だけ楽しんで
来たのだから自業自得。楽あればクロードチアリ。

「じゃあR、行きますか…」

Rの手を引いて駅前のリトミック教室まで歩いていく。途中、
猛烈な吐き気を催してゲーセンのトイレに駆け込んだ。

生まれて初めて「子連れゲロ」を体験した。

人生、長くなるといろいろ経験するものである。

ようやく教室に到着すると、そこはママと幼児の園。オヤジは
僕だけであった。嫁は父親もいる、と言っていたのにうそつき!
大きな見鏡に映った僕の姿はドラクエの「くさった死体」そのまま
だった。絶対まだ酒臭いだろうなあ…。それでも

「奥さんから聞いてますよ。今日はパパさんが連れて来て
 くれるんですってね」

嫁の教室友達であろう、菊川怜似の美人人妻が声を掛けてくれた。

「さあみんなで踊りましょう〜」

ヨウコ先生なるリトミック教室マスターがピアノを弾き始めると、
みんなが踊りだす。無垢な子供達と他愛もない踊りを踊っていると、
酒の瘴気がするすると抜けていく気がするから不思議である。

「じゃあ今日はみんなでブドウの絵を描きましょう」

ヨウコ先生がA2ぐらいのサイズの画用紙と絵の具を配り始めた。
ブドウの葉と茎だけが描かれており、実は紫の絵の具を指に付けて
ぐりぐり描く、というワイルドな描画だ。

「さ、R、指に絵の具を付けて」

しかし自分の手を汚したくないのかRは

「いやー!めー!めーよ!」

ひたすら逃げ回っている。他の子はちゃんとやってるのに。
Rを捕まえると何やら異臭がする。

「君、うんちしたね…」

「だから愚図っているのかもしれませんね」

先程の菊川怜似の美人人妻がフォローしてくれた。奥さん、
この後僕とティーでもドリンクしませんか…とナオンを
パーナンしそうになったがここは言わば嫁の縄張り。ばれたら
殺されるに決まっている。しかしそれ以前に酒臭い父とうんこ
臭い娘のスメルファミリーを相手にしてくれるとは思えぬ。

それにしてもRだけは一向にブドウの絵を描いてくれぬ。

「ほら、みんないい子にしてブドウ描いてるじゃないか」

画用紙を渡してもやはり

「めーよ!めーよ!」

怒って相手にしてくれない。

あ、これって…

怒りのブドウ。

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酒に飲まれ嫁に怒鳴られ。

大阪にいる旧友、RHが帰省を兼ねて東京に来た、というので会って
飲んだ。

僕ら共通の友人、某漫画誌編集長HIRAMEさんにも来ていただいた。
そしてHIRAMEさんの仕事仲間の方々も一緒になってもらった。

そのうちのもんぺちゃんは3年ぶりぐらいになるだろうか。
最近落ち込んでいると言っていたが、この酒の席に限っては
明るく振舞って、というかうるさかった。

そしてHIRAMEさんの編集部の女性の方がひとり。この方がHIRAME
さんの漫画誌に連載中の漫画に出てくる「ひさぴょん」という
編集者だと教えられて超興奮。

もうひとりのK野さんという女性は僕と同い年の方だったが、
途中から色男RHとイチャイチャしていたのでむかつく、いや、
ふたりがこれを機会に結ばれることになったら素敵なことね、
ひとりじゃないって素敵なことね、と生暖かい目で見守っていた。

久々に飲む酒に酔っ払い、時間が経つのを忘れてしまっていたが、
そう、僕もひとりじゃない。途中嫁から電話がかかってきて我に
返るともう午前2時。血の気が引いた。時間を忘れるにも程が
ある。

こんな時間まで飲むなんて何年ぶりだろう。RHとタクシーで
帰る途中、これまた10年ぶりでタクシーゲロまでする有様。

家に帰ってスーツを洗っていたら起きて来た嫁に当然の如く
叱られた。

「R(2才の長女)なんかね、隣の人が帰ってきたのをあなた
 だと思って『おかえりー』ってずっと言っていたのよ!」

「ごめんなさい」

また嫁を敵に回す神をも恐れぬ不敵なことをしてしまった。
ひとりじゃないって〜不敵なことね〜。

恐る恐る嫁にデジカメを見せて

「ほら、リアルひさぴょんだよ…」

「うわー。すごーい」

ごめんね。

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Yahoo!カテゴリ掲載/出産予定日に休日出勤要請。

【お知らせ】

今日、YAHOOカテゴリに登録されました。ウホー。
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【お知らせおわり】


嫁の出産予定日は10月1日である。

土曜日だから余裕で立ち会えると安心していたところ、
恐ろしいことに2日の日曜も含めて休日出勤の予定に
なってしまった。下半期の始まりなので絶対外せない
仕事なのだ。

「嫁、ごめんよう…トロ(胎児名)、ごめんよう…」

必ずしもその日に産まれるとは限らないが、僕は相当
動揺してしまった。入院の手伝いが出来ない。立ち会い
が出来ない。長女R(2才)の時の様に嫁より早く我が子を
奪い、抱くことが出来ない。

しかし嫁は強かった。落ち着いて張りのある声でお腹トロに
向けて言った。

「トロちゃん、いい?1日はダメになっちゃったから
 もうちょっと遅く生まれて来るのよ!」

そうか。トロ本人に言い聞かせるのか。我が子ならきっと
理解してくれると信じることが大切なのだ。僕はどうせ
分からないからとハナから諦めていたことよ。

「トロ様、どうせなら前の週ぐらいがいいんですけど…
 こちらの勝手で申し訳ないんですが…」

それならば僕も、とつい仕事相手にアポを取るような
へりくだり方でトロに話しかける。

「ほらRもトロちゃーんってお願いしなさい」

僕らの脇でボーっとしていたRにもそう呼びかけると、
Rは嫁のお腹をナデナデと触りながら言うのだが

「Rチャーン、Rチャーン」

「そりゃお前の名前だ!」

「ダメだこりゃ」

ドリフのオチのファンファーレと共に崩れ落ちる僕と
嫁であった。

じゃあ後半戦参りましょう後半スタート!後半はオトナの
時間!子宮を中から突っついてみれば、トロも少し早めに
生まれてくるのでは…と嫁を押し倒そうと考えたのだが、
(もうトロは2,500グラムを超えているので問題ない)

なかなかRが寝てくれないので布団の上で悶々とするしか
なかった。そしていつの間にか寝てしまい、気付いたら朝。

ああ、また空しい朝を迎えてしまった…。

ババンババンバンバン。また哀愁〜。

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トイレの我が子さん。

娘・R(2才)はトイレトレーニングのお年頃。嫁が都度
練習させているが、現時点では

「しー」

おむつの中で排泄してしまった後に自己申告する。その後
トイレに連れて行け、と嫁の手を引っ張るのである。

Rはまだトイレを「排泄する場所」と完全理解しておらず、
「した後に便器にまたがる場所」と思っているらしい。
単に便器に登るのが楽しいからトイレに入る、と考えて
いるのかもしれない。

ニコニコと楽しそうに便器に座るRの姿はとても可愛い。
娘のトイレシーンなぞ今の内しか見れないのだから見れる
内に見とけと僕は覗きに行く。しかし最近はそんながっつ
いた下心が2才児にも通じたのか

「めーよ!」(R語で激しい拒否をあらわす)

覗くなと怒られてしまう。ああ、自ら期間限定の期限を
縮めるハメに。それならば覗くだけでなくトイレに連れて
行くところから始めてみよう。真面目に僕もトイレトレー
ニングをしてみよう…と、Rが「しー」と言ってきた
タイミングを見計らい

「じゃあお父さんとトイレ行きましょうか」

貴婦人をエスコートする英国紳士並の丁寧さでRの手を
取った。ところがRは

「めーよ!ママー!ママー!」

あくまでも嫁と行きたいと泣いてしまった。やはり下心が…
しかし待て。お風呂は喜んで一緒に入るではないか。なのに
何故…と僕は考えた。

何を恥ずかしいと感じるかは人それぞれである。自分の過去を
振り返れば思い当たることもなくもない。

僕は昔、嫁とはガンガンまぐわる癖に、お風呂は恥ずかしくて
絶対一緒に入れなかった。今はさすがに慣れたが自分でも理解
不能だった。

僕の血を引くRにも同様のことがあるのかもしれない…と、Rに
フラれたのでひとりトイレに入ったところ、Rの声が聞こえた。

「とーんとん」(ノックのつもり)

しまった。ドアに鍵をかけてなかった。ちょと、待て、今、
身動き取れない…しかしRは逆襲とばかりにドアをご開帳。

「きゃー。Rさんのエッチ!でも…これでおあいこ」

Rは2秒後無言でドアを閉めた。「見なきゃいい物を見てしまった」
というような苦い顔をしていた。2才児には刺激が強過ぎたか。

排泄物陳列罪。

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伝説のオウガニックバトル。

水道橋の「おもちゃ王国」を出、昼飯を食べるために店を
探して皇居方面に歩き始めた僕と嫁と娘・R(2才)

しかし良さげな店が見つからず、嫁が空腹で苛立ち始め

「そこのマックでいいよ。あ、あっちの吉牛でもいいよ」

嫁の美食レベルは最低の低まで落ち切っていた。しかし
僕は海原雄山ばりの冷徹さでそれを断わり歩き続けていた
ところ、神保町までやって来た。ここなら多少地理に明るい。

「神保町ならうまい洋食屋を知ってるぞ」

嫁をなだめて勇んで向かったのだが

「あ、休みだ」

「…最悪」

嫁の顔に般若が乗り移った。折りしもここは帝都のど真ん中。
空気が震えるほど怒りを露わにした嫁は、さながら帝都物語の
魔人・加藤保憲のよう。本当に東京を呪いで破壊しそうな勢い。
恐ろしい。触らぬ神に祟りなし、触らぬ嫁に孕みなしである。
触っちゃったから妊娠しているけど。

荒ぶる山の神を鎮めるには、祓いたまえ清めたまえと祝詞を
読む…わけはなく、早く食える店を見つけなければならず、

「あ、あそこになんかバイキングやってる店がある!」

幸いにもレストランを見つけたので一も二もなく飛び込んだ。
入店してから気付いたのだが、ここはオーガニックレストラン
というコンセプトの店で、有機野菜のみを使った料理しかない。

肉が全くなく、レンコンやイモの煮っ転がしのような料理しか
ない。僕は野菜が苦手で、しかもこのような料理は在り難そうに
盛り付けてなくても、実家の栃木に行けば幾らでも食えるし…と
途方に暮れていたら

「妊娠中の私やRには体にいいから歓迎だけど、アナタは辛い
 でしょ。本当にこの店でいいの?」

荒ぶる嫁が一転して上機嫌になって言った。

「いいよ。だって君、怖いんだもん」

Rも一生懸命モゴモゴと食べており、僕に

「おいしい?」

と聞いてきた。最近覚えたての言葉である。

「うん。おいしいよ。おいしいよR」

でも僕はオーガニックよりオーガズムの方が好きだ。

その横で腹を満たして一段落した嫁からは最早祟り神の恐ろしさは
消え、胎内で生命を育む穏やかな母なる神のように見えた。

孕みたまえ清めたまえ。

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