素直にアイムソーリー

息子・タク(1才)が娘・R(3才)をバシンと叩くのを目撃してしまった。

「こら、お姉ちゃんを叩いちゃだめでしょう」

タクを咎めるとRも口を尖らせて

「たっくんがいじわるするの」

と僕にチクリを入れる。Rはやられたらやり返すより、そのまま泣いてしまうタイプである。強引な男に言い寄られて断れない女になってしまったらどうしよう…ここは鍛える意味で

「やり返せ」

とRの逆襲を煽ってやろうとも思ったが、今の場合はRがタクに悪さをしたための報復…というわけでもなく、Rは何もしていないのに叩いたわけで明らかにタクが悪い。

「タク、お姉ちゃんにごめんなさいしなさい」

なのんでタクに謝らせる無難な方針を採ることにした。するとタクは

「ねえね(Rのこと)、ごめんね~」

深々と頭を下げた。

「はい、よくできました。何も悪いことしてないのにぶっちゃだめだよ。R、ちゃんと謝ったからいいだろう?」

タクの素直さに感心したのでこれにて一件落着。

と、思いきやタクは次に僕にも

「ぱぱ、ごめんね~」

と謝り、台所でゴハンの支度をしている嫁にも

「まま、ごめんね~」

コメツキバッタの如く家族全員に謝って回った挙句、

「くまちゃん、ごめんね~」

何故かクマのぬいぐるみにまで謝っていた。度を過ぎた謝罪はよろしくない。アメリカでは訴訟ごとで不利になる為、滅多に「アイムソーリー」と言わないらしい。そんな中で日本人がついペコペコと「アイムソーリー」と謝ってしまうと、

「アイムソーリーと言ったから非を認めた。賠償しろ」

と訴訟大国アメリカの恐ろしさを見せ付けられる…そんなことが思い浮かんだ。必要以上に謝ってしまい、奇異の目で見られる日本人とはこのようなものだろうか。

「ごめんね~」

タクはテレビにまでペコペコしていた。

画面に映っていたのはアベソーリーだった。

問題:僕も弟に恐ろしい物で殴られたことがあるが、何で殴られたでしょう?

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