2007年06月19日
ケチャップNo.1
嫁は毎朝弁当を作ってくれる。ありがたいことである。
駅弁ファックはさせてくれない。口惜しいことである。
毎朝弁当を持たせてくれるので、娘・R(3才)にも馴染みの風景となり
「ぱぱ、おべんとー持った?」
いっちょ前に僕に確認してくる。そして何を勘違いしたか、僕が会社でやることは弁当を食べることだけ、と思い込んでいる。朝から夜まで食べ続けることになり、無駄に豪華なローマ皇帝の大宴会のようである。
「パパはね、会社でお弁当を食べるだけじゃないんだよ」
とRの勘違いを修正しようとするのだが
「じゃあ電車の中でお弁当食べるの?」
どんどんズレた方向に行ってしまうので、何だか別にどうでもよくなってしまった。
今朝もいつものように嫁が台所で弁当をこさえていた姿があった。何気なく眺めていると、絵を描くようにケチャップをぐりぐりと絞っていたので嫌な予感がしたので覗いてみると、
「わあああああ何を描いてるんだああああ」
なんとオムライスにケチャップでスマイルマークを描いていたのである。
(^―^) ←こんな感じの。
「え、だめ?」
「当たり前だ。こんなの会社の人に見られたら恥ずかしくて」
「あっそう」
と言いながらも嫁はやめるどころか、スマイルマークのほっぺたにまでぐりぐりとケチャップで赤い丸を描き、
(●^―^●) ←このようになってしまい、より被害が大きくなった。
「何付け足ししてんだよー!これじゃピカチュウのほっぺたじゃないか…」
空中元彌ケチャップをお見舞いしてやろうかと思った。しかし「嫌なら食うな」方式の我が家である。嫁がそう作ったのならそれを有難くいただかねばならない。いつもより重い気がする弁当箱をカバンに入れ、会社に向かった。中から笑い声が聞こえたらやだなーとか考えながら…。
仕事が始まり、昼休みが近付くつれ憂鬱度が増した。出来れば他のみんなは外に食べに行ってしまいますように…そのためならドラゴンボールを今から集める旅に出てもいい、とさえ思ったが、そんな短時間で集めるのは無理だった。
結果、オフィスで弁当を食う人が多く残ったまま昼休みとなってしまった。いっそのこと昼飯抜きにしようか、とも考えたが腹は減っている。
「えーい、ままよ!」
わしも男じゃ、と腹を決めて弁当箱を開けた。すると…
持ち運びが荒かったせいか、ケチャップが蓋に付いたりしてスマイルマークは見るも無残に崩れてしまっていた。お陰で誰にも何も言われないで済んだが、これはこれで何故か寂しい気持ちになってしまった。一生懸命作った雪ダルマが溶け、顔が崩れてしまった時の悲しさと言おうか。
こんなお茶目な弁当を作ってくれる嫁を暖かく受け入れていればよかったのである。そしてケチャップ顔が崩れないように大事に持ち運び、例え昼休みに同僚にからかわれても
「いやー、うちのかみさんがねー」
と刑事コロンボ風に頭を掻いて軽く流せばよかったのだ。それだけで充分幸せなのではないか。それを大の男の弁当か、などとつまらぬ見栄を…その方が笑ってしまう。
あまり多くの物を求めても、真に大切な物を見失ってしまうのね…と、ケチャップを舐め舐め考えたのであった。
「人生には三つのものがあればいい。希望と勇気とサム・マネー」
Byチャーリー・ケチャップリン
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