アド街ック地獄

寒かったので娘・R(3才)と息子・タク(1才)を隣の区の児童館で遊ばせようと嫁が言うので連れて行った。

ここはランチタイムには食べ物を持ち込んで食べても良いという館内規則だったので、嫁に子供達を任せて僕が弁当でも買いに行くことになった。

何となくの土地勘で、近くに商店街でもないだろうかと歩いていたら、とある駅前に辿り着いた。

「あ…ここは…」

もう随分と来ていなかったので忘れていたが、遠い昔、少なからず因縁のあった街であった。古傷が疼くというか、それでいて懐かしいというか、痛みの中にほんの少しときめきメモリアルでちょっとだけエロスな思い出というか…要は女の子絡みでこの街に来たということであるが…。些か鳥肌が立ってドキドキした。

霊能者が心霊スポットに立った時の

「ああっダメ!ここヤバい!」

と怯える感覚もこのようなものであろうか。

しかし結婚前の昔のことだ。当時ならいざ知らず、今この思い出を嫁に話したところでフンと鼻で笑われるだけであろう。別にこの街でひどいことをしたわけではない。第一話そうにも僕も既に具体的な記憶も断片的にしかなく、痛し痒しの感覚がわずかに疼くだけではないか。何でこの街にあの子と来たんだっけ…?相手もおそらく忘れているだろう。それぐらい小さな事である。

そう、それは年月の積み重なりに埋もれたほんの些細な出来事…と速やかに気持ちを切り替えたのだけれども、入ったことがある店などを見付けてしまって

「あーそういえばココで一緒に飯を食った。それであんな話とか…」

芋蔓式に記憶が甦ってしまいギャース!過去の記憶に後ろ髪を引かれるような感覚…。

今僕は2児の父である。現在の時刻は2児ではなくて1時である。3時のあなたは森光子である(古いなあ)現在の僕の社会的ポジションなぞを改めて確認しながら

「この街はあまりいたくない…」

とっとと買い物をして家族の元に戻り、子供達が食べたり遊んだりする姿を見てようやく平常心に戻ることが出来た次第。家に帰った後

「お昼の買い物、いくらだった?」

と嫁が聞いてきた。

「1,500円ぐらいかな」

「払っておこうか?」

「いや、いい」

断った理由は、勿論夜になって子供達が寝た後で嫁に

「昼飯代。体で払ってもらおうか」

と迫るためであったが

「いや、普通に1,500円払うし」

にべもなく断られてしまった。まあこの反応は想定の範囲内である。ホリエモンでない僕でもそれぐらいは分かる。いつもなら最終的にはアナルホリエモンまで辿り着くべくもう少し粘るのだが、今日は昼間の街の思い出が引っ掛かり、「あの子、今何してるかな…」などとも考えてしまい、及び腰になってしまったのであった。

古傷のような街の思い出とエロスを切り離せないところが僕の繊細なところである。自分で言うな。

エロス街の悪夢。なんつって。

問題:僕がこの児童館で生まれて初めて経験したことは何でしょう?
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