カレーなる一族

嫁と娘・R(3才)と息子・タク(1才)が旅行中なので留守番中である。

ひ、ひとりでできるもん!

家の中で異様に存在感のある雛人形達は大人しくしており、昨日の日記に書いたような、気が付いたら三人官女の顔が全員瀬戸内寂聴になっていたり、五人囃子が寂聴ファイブ、じゃなかったジャクソンファイブになっていたり、一見異常がなさそうだがよく見たら全員額に「肉」と書かれていたり等の怪奇現象は幸いなことに起きていない。

置き土産である嫁が作ったカレーをネトネトと食べていると嫁からメールが来た。

カレー娘
「Rが作ったカレー食べてね!」

とのことだった。泣けてきた。オロロン。美味しい、美味しいよR。食べてる、食べてるよR。

その内嫁から電話がかかってきた。はいはいと出ると

「テレビ電話でかけてるんだけどー」

慌てて画面を見るのだがそうすると音声が聞こえず、どう設定すれば聞こえるのかポックリ忘れてしまっていたので携帯をアワアワお手玉してしまった。

画面の方もおそらく顔を近付け過ぎたためであろう、マーズ探査機が送って来た火星の画像のような何が何やら分からない状態で

「うわ、火星人!」

と思ったら嫁の顔だったりして、お前はいいから子供達を出せとまったく埒が明かぬ。いたずらにDoCoMoの懐を潤すだけであったので

「普通の電話でかけ直して~」

最新技術を全く使いこなせない僕らであった。

「ぱぱ、うみがみえるのよ」

仕切り直して電話をかけてきたRは楽しそうな声。父がいなくても存分に楽しめることに少し嫉妬。しかし僕は知っている。Rは何か楽しいことがあるといつも

「ぱぱにおしえてあげよーっと」

と叫んでいることを。そして後で僕に一生懸命説明してくれるのだ。今回も至る所で叫んで欲しい。ていうか叫べ。世界の中心でパパと叫べ。おじさんの中心の黒バナナをお食べ。じゃないと僕はカレー鍋に顔を突っ込んで死ぬる。

「タクはいるかな?タクと変わってくれる?」

Rと喋っていると涙が出て来そうなのでタクの声を聞かせるようRを即すと

「いやー悪いねえ。今ホテルに着いたところなんだよ。目の前に海が見えていいねえ」

随分とペラペラと喋る1才児だなあと思ったら嫁父ではないか。呼んでねえー。結局タクは携帯を持たせると喋るより携帯いじりに没頭してしまうとのことでダメであった。聞こえてくるのは嫁一族の楽しそうな笑い声ばかり。

目の前に海原が横たわるホテルで一泊して水入らずの団欒…か。僕は
目の前に女体が横たわるホテルで一発して嫁いらずの淫乱…

だったらよかったのになあ。

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