はー追儺追儺

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「近所の神社で豆撒きやるってさ」

「あ、そう」

ご近所の情勢に詳しい嫁が節分イベント情報を持ち込んできた。

「年男年女は豆撒けるらしいよ。あなた年男だから参加すれば」

「僕は永遠の17才だから該当しない」

年男なんて自分の増えまくった年齢を再確認させるための嫌味なイベントに過ぎないと思って拒否したのだが、ヒマだったので豆撒きはしないが見に行くことにした。

神社に着くと舞台の前に結構な人だかりが出来ており、皆言い合わせたように大きな袋を持っていたので嫁と首をかしげていたのだが、そのうちやって来たご近所さんが教えてくれたところによると

「豆以外にもお菓子とか撒くのよ」

とのことであった。やがて神主と裃を着た年男年女達が舞台に上がり、その通り豆やらお菓子やらを撒き始めた。なるほど建前のようなものか。僕が幼稚園児の頃、実家が新築された時に行われた建前の思い出が甦る。両親等と一緒に餅やお菓子を投げていた僕は、群衆の中にみごとなツルッパゲのおじさんがいたので、確かその禿げ頭だけを狙って

「たこ、たこ、あーたれ」

と投げていたと思う。

そんなことをボーっと考えていたら

「ぎゃあああああ」

チップスター(ポテチ)の缶が僕の頭に直撃。ああこれはあの時のタコオヤジの呪い…とかくこの世は因果応報…ていうかもちょっと撒く物を考えろよ…神社って無病息災とか言ってるくせに危機管理はぞんざいであることよ…などとやり場のない怒りを抑えつつポテチはゲットした。

家に帰ると嫁が娘・R(3才)と息子・タク(1才)に言い聞かせていた。

「おうちでも豆撒きをしますよー。鬼は外、福は内、と言ってパパに豆をぶっつけましょう」

ご丁寧に既に鬼の面も用意されていた。ええー。僕が鬼かよ。年男だから撒く方だろう。とも思ったのだが逆らうと我が家の真の鬼であるところの嫁の鬼の角が現れるので従うことにした。鬼の面を被り、

「鬼だぞー。がをー。…いいかいRちゃん。ここでね、鬼は外って豆投げてね」

「おにはそとー。おにはそとー」

「うわああ。豆は嫌いだー」

アンパンマンに出てくる悪のボスキャラをイメージして名演技したつもりだよ僕は。

「はい、タクも豆撒いてごらん。鬼だぞー。がををををを」

「がおー。けへへへへ」

タクは僕のマネをするだけ。豆を渡しても食べるだけ。仕方がないのでRを連れて玄関の扉を開け

「じゃあお外に向かって豆を撒こうね」

Rにも豆を投げさせようとしたのだが

「お外とにお豆が消えて行っちゃうの。いやなの」

という大変叙情的な理由からやりたがらなかった。

「じゃあ仕方ないネ。やめよう」

としたのだが、

「やんなきゃだめでしょ!」

誰もやらなきゃ自分が、と嫁が狂ったように叫んでは撒いていた。

子供達が寝た後は当然

「節分の豆撒きは終わった。さあ接吻と種蒔きをしよう」

と鬼に肉棒状態で嫁に擦り寄ったのだがいつもの如く断られてしまったので、やはり真の鬼は嫁だと思う。

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