2006年09月10日
旅とフナムシと女とヒデキ
嫁と娘・R(3才)と息子・タク(10ヶ月)が旅行から帰って来た。
「面白かったかい」
「うん。まあ」
「どこ行って来たの」
「箱根の旅館に泊まって、温泉入って、帰りは真鶴の海で遊んで来た」
よかったですね、嫁。こちとら土曜出勤でしたのよ。
「Rちゃんは何が一番楽しかったのかな?」
「うみ。もうこわくないの!」
先月連れて行ったときは波を怖がって「うみ、きらい!」とまで言っていたのに。
「私は海はちょっと…だったなあ。フナムシがわんさかいて」
「岩場の海だったのか?」
逆に嫁の方が嫌だったようだ。嫁はフナムシを親の敵のように嫌う。確かにあの陰毛に足が生えたような風貌は僕も苦手である。
「それでさー、考えてたんだけど」
「何だ」
「紀子さまのお子さんの誕生日ってRちゃんと一緒じゃない?9月6日」
「あっ!そういえば…」
ここで嫁が言っているRちゃんとは、娘のRのことではない。かつて近所のゲーセンでバイトしていた、美少女Rちゃんのことである。当時「beatmania」というゲームにはまっていた僕はそのゲーセンでRちゃんと知り合い、beatmania以上にRちゃんにはまってしまった。
彼女とは毎日のように会っていたのだが、ゲーセンを辞め、一時期メイド喫茶で働いていたりしたがそこも辞め、また違うゲーセンでバイトして…そこも辞めてからは音信普通になってしまった。
僕でさえ忘れていたRちゃんの誕生日を何故嫁は覚えていたのだろう。そして僕は何故忘れていたのだろう。おそらく…Rちゃんのことを思い出すたびに、何故連絡をくれないのか…所詮その程度の付き合いだったのか…結局そこに苦悩することになるので、最近は心の奥に記憶を眠らせていたのではないか…と思われる。
「でもお前、よく覚えてたね」
「私も誕生日プレゼントあげたことがあったから」
ああ、そんなこともあったなあ。嫁に惚れた女の誕生日にプレゼントをさせるとは、なんて僕は最低の男だったのだろう。そうだ。僕はフナムシだ。時々嫁は僕をフナムシを見るような目で睨む。今回の僕置き去り旅行もそのような気持ちがあったはずだ。
「ていうか何でそんなことを旅行中考えてたんだよ!」
「いやー。旅館の夜って長くってさあ。なんかつらつらと色んなことが浮かんでは消えて…」
暗闇は過ぎた過去を振り向かせる。昔の歌に
「若さってなんだ。振り向かないことさ」
という歌詞があったが、それに沿えば僕らは若くないのかもしれない。若いということは素晴らしい。フナムシ的行為も平気で出来る。行為自体の是非はあるが、その命知らずのマインドが僕には眩しい。今の若い人も僕には眩しい。ヤングマン。さあ立ち上がれよ。ヤングマン。今翔びだそうぜ。ヤングマン。もう悩むことはないんだから。
素晴らしい。フーナムシーエー。
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