お留守番の長谷川~♪


「金曜と土曜、親と旅行して来るから」

と嫁が言った。それは娘・R(3才)と息子・タク(10ヶ月)を連れて旅行する、という意味であり、すなわち僕は留守番。出発日を僕が仕事している金曜日に持って来るあたり、その意図は明白である。

「ふーん。どこ行くの」

「たぶん箱根」

「まあ楽しんでおいで」

僕はこう答えるしかなかった。これは僕が先週「WIRE」というレイヴパーティーでひとりだけ楽しんで来たことに対する代償であろう。ダメとは言えない立場であり、ギブアンドテイクなのである。和訳すると「やられたらやり返せ」ちょっと違うか。
実際嫁のそんな本音が聞こえて来る気がしないでもないが。

嫁の思惑がどうであれ、嫁には羽根を伸ばして欲しい。束の間だけでも家事からの呪縛から解かれて欲しい。僕が解けとか言うのは禁句。上げ膳据え膳の宿。広い露天風呂。ああ、僕も子供達と温泉入りたいなあ…。

しかしそれは叶わぬ願い。僕はもう先週フィーバーしてしまったのだ。

「あなた、金曜の晩御飯はどうする?作っていく?」

「別に…ココイチのカレーでも食べるからいいよう」

どうせひとりぼっちの金曜の夜である。久々に外食の味もいいだろう。それかどなたか僕とタマキン、じゃなかったハナキンの夜を共に過ごしてくれるギャルは今すぐメールを!って金曜は今日じゃないかギャアアア!

仕方ない。まじでひとりで過ごそう。地元駅前でナオンをパーナンしてもすぐ足が付きそうで怖い。ココイチでカレー食って、その後は魔太郎ばりの薔薇柄シャツが似合うオカマのバーテンがいる店で飲もう。

一家の長であるところの余が置き去りにされることを自ら辱め、「ウラミハラサデオクベキカ」と魔太郎バーテンと恨み酒を飲もうぞ。

まあ今回置き去りにされたとはいえ、嫁とは長い旅を共にする間柄である…。人生という長い旅をね!

それも置き去りにされたらどうしよう…。

旅は道連れ 余は情けねー。


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