眠れぬ森のヴィジョン


夜、息子・タク10か月が眠れないまま布団の上をゴロゴロ転がっていた。お前はピンボールか。

僕や嫁によじ登ったり顔をベシベシ叩いたり、痛いったりゃありゃしない。

「もう寝ろ~」

みんな一緒に寝る時、僕はいつも子供達よりも先に寝てしまうので嫁に馬鹿にされる。だから眠れ。眠れ。ヤゴヤゴヤーゴの子守唄~。聞けばぁいつしか眠くなるぅ~。ヤーゴ、ヤーゴ…。

「こうやってね、お尻から背中を撫で上げるといいのよ」

うつぶせのタクを嫁がマッサージし始めた。するとタクは

「むーん」

唸り声を上げなんだかうっとりしている。なるほど効果がありそうだ。

「では僕が…」

タクのお尻から背中をぺろりんと撫でた。

「けへへへへ」

しかしタクはうっとりするどころかくすぐったいようだ。何故だ。嫁とどうやり方が違うのだ。

「頼む、うっとりしてくれ」

僕がいくらやってもケヘケヘ笑うだけでちっとも寝ない。変なツボにでも当たってしまっているのだろうか。この僕の手のスナップがおかしいのか。

違うお尻で試してみなければなるまい、とタクの隣で寝ていた嫁の尻をペロリンと撫でてみたのだが、僕自身がうっとりしてしまい、挙句には

「ぬうん」

嫁の凄まじい闘気と共に手で払われてしまった。

ひでえやご隠居、そりゃあんまりだあ。

うっとり八兵衛。


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