セーラー服を売り飛ばさないで


僕はセーラー服を探していた。

これだけ書くと危険人物に思われるかもしれないので、詳細を書くことにする。

練馬区一のセーラー服好きを自称する僕は、娘・R(2才)に着せるセーラー服を探しに、デパートの子供服売り場をうろついていて、時折水着やぱんつにも足を止めながら

「あらこれカワイイ」

などと手に取っていた。詳しく書いたら余計怪しい人物になったかもしれないがまあよい。何故セーラー服を探しているのかというと、元々ウチには

セーラー服R
こういうセーラー服があったのだが、ここ最近タンスの中で見かけないなあと思い嫁に聞いてみたら

「もう着れなくなったからリサイクルショップに売った」

とのことで大変落ち込んだのである。嫁よ、とんでもないことをしてくれた。セーラー服を売ってしまったら、その店はブルセラショップになってしまうではないか。初めて着たセーラー服であるし、着れなくなったとしてもずっと取っておきたいと思っていたのに。

「すぐ売れたみたいだよ」

「そりゃそうだろ…一応ブランド物だし。それに隠れセーラー服マニアのオヤジがどれだけいるか、君は知らぬ」

僕も知らないけど。

そんな訳でセーラー服を求めていたのだが、先程のヤツを買った時もそうだったが、いざ探すとなるとなかなかないものである。かと言って店の人に「セーラー服はありますか」と尋ねるのは本屋で「デラべっぴんありますか」と聞くことより恥ずかしい。

似たような物でブレザーはあった。紺色のブレザーばかりが置かれているコーナーがあり、そこには「お受験」と書かれていた。なるほど、お受験か。僕も就職活動の時スーツを買ったけれども、みんな紺だった。似たようなものなのかな。

「そうだ、お受験用にセーラー服を探しています、と聞くのはどうだろうか」

セーラー服もブレザーも紺色で、制服っぽい。お受験なんて考えたこともないので、セーラー服がお受験にふさわしいのかどうか知らないが、もっともな大義名分は立つ。

「しかしこの時期にお受験の学校(幼稚園)なんてあるのか?」

普通入試は2月頃であろう。まずい、ボロが出てしまう。ええい、アメリカンスクールを受験すると言ってしまえ。アメリカの入学式は9月だから、この時期でもおかしくなはい。

「この時期にお受験ですか?」

と店の人に聞かれても

「ええ、聖ドン・ガバチョ・アメリカン女学院を受けさせようと思いまして」

とでも答えておけば、怪しくないな!いや、充分怪しいかも…と延々悶々と考えていたが

「…どういったものをお探しで」

うわああああああ!ついに店の人から声をかけられてしまい、逃げ出しそうになった。ええい、ここまで来たらもうストレートに聞くしかない。

「セーラー服を探しているのです」

「あの、お子様用ですよね」

「はい」

僕が着るわけないだろうが。

「すいません、ないですねー」

だったら最初にそう言え。

このやりとりだけでもう真っ白に燃え尽きてしまい、これ以上探す気力がなくなってしまった。

嫁とRが大好きなハーゲンダッツのアイスを、内緒で買い食いして帰ったのであった。もしセーラー服があれば…

Rに着せて月に代わってお仕置きしてもらうのに…。


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