日本の夏、カンチョーの夏


真夜中、嫁がおかしな寝相で眠っていた。

片足を開き膝を曲げ、左手を後頭部に、右手を下腹部にそれぞれ当てて、つまりはマイケル・ジャクソンが片足が爪先立ちになって、腰をくいくいさせて

「ポー!」

とポーズしている姿にそっくりだったのである。

こんな感じ。

ひとりでケラケラ笑った後、ここは「This,This,and ,This」と片っ端から商品を指差して買いまくる豪快な「マイケル買い」のように、

「ディース、ディース…」

と嫁の乳首をツンツンしながら性的いたずらをしてやろうと思い立った。

「ディース…」

しかしやめた。嫁が全くノーリアクションなのである。泥のように眠っており、疲れているんだなあとすまない気持ちになった。嫁の反応があるまでやり続けると、安眠を妨げられた嫁は激怒するに違いない。これ以上いたずらすることは封印された魔人ブウを叩き起こすことに等しい。

僕もおとなしく寝た。

翌朝、僕より早く起きていた嫁は

「あなた、すごい寝相だったよ」

「え、お前こそ…。いや、どんな風に寝てたのだ僕は」

「カンチョーし放題って感じ」

「はああ?」

どうやら僕はおヒップを突き上げるような形で土下座に近い格好で寝ていたようだ。寝ながら嫁に詫びていたのだろうか。ともかく嫁にいたずらしないでおいてよかった。もし行っていたら、その報復行為としてニンジンとか突っ込まれていたかもしれない。

僕のように嫁がいたずらっ気を起こさないことにも感謝した。僕はまだまだ嫁に尊重されている、ということだろうか。

基本的人権のカンチョー、とも言うし…。


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