2006年04月12日
スパイスガールとわたくし
暮れなずむ街の 光と影の中。
愛する娘へ 贈るカレー。
というわけで栃木の実家から帰って来たのは9日。我が家の「カレーの儀」の日であった。娘・R(2才)が産まれた8月9日。嫁が産気付いていよいよ産婦人科に突入、というタイミングで僕が腹ごしらえにカレーを食べていたことが由来となり、毎月9日はカレーを食べるのである。
しかしながら冒頭でも触れたとおり、帰って来た時には既に暮れなずんでいる夕方。既に黒ずんでいる僕のB地区。これから買い物に行ってコトコトとカレーを作るとなると、夕飯が大変遅くなってしまう。
「よし、テイクアウトしよう!」
近所には「夢民」と書いて「むーみん」と読む、ネットアイドルのハンドルネームのようなカレー屋がある。よく駅前にある赤い看板の店である…ってそりゃ和民じゃボケ。名前はセンスがないが味は確かであるので、そこで僕・嫁・Rの3人分のカレーを買うことにした。
但しスーパーで売っている一般的なカレールウとは違う辛さがあるので注意が必要であった。
前の日記にも書いたが、Rにせがまれて「辛ラーメン」(韓国の辛いラーメン)を食べさせたのだが、やはり辛過ぎたらしく泣いてしまったことがあり、韓国なだけにコリア参ったね、と大騒ぎしたことがあった。Rは以前ジャワカレーの辛口でも平気で食べていたので、辛さに強いのだと思ってしまっていたのだ。
その時の反省を活かし、夢民においてはRのカレーは、一番甘口のカレーに更にミルクを入れてマイルドにしてもらった。
そして今月も無事カレーの儀が執り行われることを八百万の神とついでにカレーの王子様に感謝し、皆で食べ始めた。やはり気になるのはRの口に合うかどうかである。
「R、おいしいかい?」
Rがひと口めを口に運んだ。
「うん。おいしー…」
「そうか、よかったよかった」
「おいし……う、うわあああん!」
ほっとしていた刹那、Rはワンテンポ遅れて急に号泣し始めてしまった。僕も食べて気付いたが、このカレーには「後から来る辛さ」があったのだ。
Rは、こんなもん食えるか、という物凄い形相で
「めっ!」
カレー皿をばしいっと叩いた。海原雄山を髣髴とさせる凄まじい怒り。
「ああ、ごめんよ。パパが悪かったよ」
代わりのゴハンを…といっても、Rがカレー以外を受け付けてくれるかどうか。カレーはRの好物であり、今日のカレーの儀を楽しみにしていたので、他のものを出しても拗ねて余計泣き叫ぶのではないかと危惧した。しかしこれ以外のカレーはない。ああどうしたらいいのだ…と何の策も浮かばないまま、ただ泣くRを抱いていたところ、
「アンパンマンカレーを買ってくるのよ!ショップ99に売ってるわッ!」
嫁が叫んだ。おおそうか嫁ナイス!と僕は走った。ショップ急!キュ急キュキュ急!
「おいしいねー」
ものの5分で買って来て、ものの3分で嫁が暖めて、再びRに笑顔が戻った。Rの好みと近所のお買い物事情を知り尽くしている嫁。さすがだ。
Rはニコニコしているものの、そのアンパンマンカレーは99円。僕が食べているのはその10倍近い値段のものであり、少し罪悪感を覚えた。R、いつかは一緒に夢民のカレーを食べようなあ。
僕が望んでいようといなかろうと、Rはカレー好きなのでその夢は実現しそうであるが。
これを遅カレー早カレーといいます。
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