陳腐・オブ・チキン

クリスマスのご馳走といえばクリスマスケーキとチキンであろう。

「いや、なんと言ってもクリスマスのためにゲットした彼女の女体でしょ」

と反論する奴、ちょっと体育館の裏に来い。すみません、お願いですから僕の目に付かないところでイチャイチャして下さい。

ケーキは近所の洋菓子店で買ったが、チキンについては

「ケンタッキーあたりで買って来ようかしら」

嫁がそんなことを言って出かけたと思ったらプリプリしながら帰って来た。

「ケンタッキーでさ、『予約がない方は3時間待ちです』って言われちゃった」

「まじで?ビッグサンダーマウンテンだってそんな待たないぞ」

「それで、『こちらのセットならすぐ用意できます』って言われたのが2300円のパックで」

「それだったら他にもっと美味いのにお金使いたいよね」

「しかも冷えてるの勧めるのよ」

それって…


まさにこれである。

「私の後ろに並んでた人、『ふざけんな』って言ってた」

きっとその人はこう言いたかったに違いない。ケンタッキーだけに「チキン野郎」と。

ただこれはケンタッキーを滅多に利用しない僕らが無知なだけであって、よく買う人にとっては常識なのだろう。だから賢い消費者は予約をしているのだ。クリスマスという異常事態だけを取り上げて責めるのは酷であろう。

「じゃあメリークリスマス」

しかし夜になって開かれた宴には、ちゃんと鳥の唐揚げとローストチキンが食卓に並んだ。

「お、これもうまいじゃないか。結局どこで買ったの?」

「西友」

せめてデパ地下とか…まあいいけど。西友はクリスマスだろうがいつでも僕らに優しいのさ。

娘・R(3才)と息子・タク(1才)はチキンよりケーキに大興奮。タクはまだかわいそうだがクリームを食べさせるのは早いので、スポンジだけばくばくと。一方Rはケーキよりもその上に乗っているチョコのプレートやサンタクロースの形をした砂糖菓子が大好きで、早速食べ始めていた。

容赦なくサンタの体をガリガリ齧っていくR。

「さんたさんでーす、こんにちわ」

食べかけのサンタを使って人形遊びを始めた時には

「うわああ。もう頭がないじゃないか」

怖いし。

「さんたさん、あたらしいかおよ」

アンパンマンと勘違いしてるし。

チキンよりアカズキンの爺さんが好きなR。彼女に屠られたサンタを偲んで祈りましょう。

チキンアーメン。なんつって。

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