街の好みはまちまち
我が街・江古田の商店街のお祭りがあったので嫁と子供たちとちょいと行ってみた。
僕はこの街が好きだ。適度に賑やかで適度に猥雑で適度に田舎で、他の街とは一味違うスパイスがいくつかあり、居心地が良くてもう7年ぐらい住んでいる。
「ただいまから武蔵野音大OBによりますミニコンサートが始まります…」
というアナウンスを聞いて
「みるー」
と娘・R(3才)が僕の手を引っ張るので見に行った。そう。この街は武蔵野音大と日芸と武蔵大学という3つの大学があり、どことなく文化的な香りがするのだ。普段はその香りよりも、夜になると駅前に大量発生する酔っ払い大学生の酒臭さのほうが強いが。
パンパパンパンパンパンパンパーン。
4人による管楽器演奏が始まった。何故かドラクエのテーマ。2曲目もドラクエのBGM。その次もドラクエ…。
「…なんでドラクエの曲ばっかりなんだ」
「分かり易い曲を選んだんじゃない?」
嫁とそんな話をして、出店の食べ物を物色することにした。ドラクエが分かり易いと思われる街…。江古田はオタクの街でもある。漫画家が沢山住み、友達の美人声優もいる。エロゲー製作の会社もある。駅前の本屋は異常にマンガとエロマンガが充実している。しかしそんなこの街が好きだ。
「あっ。くまちゃん!」
Rが叫んで指差すその先に、熊の着ぐるみを着た人が子供たちに愛想を振り撒いていた。近付いて行って、Rは握手と頭を撫でてもらった。熊は息子・タク(1才)にも握手しようとしたのだが、タクは怖がって「ひーん」と泣いてしまった。
その後焼きとうもろこしに異常な情熱を見せる嫁が即買いし、Rにはフランクフルト、タクにはおでん、僕はビールを飲みながら商店街をぶらぶらする。出店も商店街の人達が出しているものばかりで、こういうローカルな雰囲気が実にいい。
「ねえパパー。くまちゃんは?」
Rは先ほどの熊が気に入ったらしく、彼が何処に行ったのかを探していた。
「あ、あそこにいた…けど」
ちょうど僕がその姿を見つけた時、熊は小学生ぐらいの男の子に
「昇龍拳!」
実にいい角度から入ったアッパーを顎に食らって悶絶していた。
※昇龍拳:格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズに出てくる必殺技。
ちなみにこれは早稲田にある中華料理屋「昇龍軒」
子供が昇龍拳を放ってくる街、江古田。この街はゲーセンの街でもある。今は減ってしまったが、全盛期は10軒以上もあったという。全国レベルの腕の者が集まる有名ゲーセンもあった。僕も通いつめたひとりなのだが…。
ちょっと商店街を歩いてみれば一風変わった姿が見えてくる街。僕の波長とわりと合っているのかもしれない。そんな江古田の街と商店街が好きだ。
これを奇商店街といいます。
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