愛するあなたへ 贈る言葉。

暮れなずむ街の 光と影の中。

夕暮れ時だというのに娘・R(1才)は元気に家の中を
駆け回っていた。いくら遊んでも遊び足りないように
見ゆる。そして僕は近所の本屋に行きたかった。

「R、久しぶりにチャリにでも乗って、お父ちゃんと
 おんもに行こうかあ?」

「ワタシも全然乗ってないから、いいかも」

嫁の承諾も得た。Rは待ってましたとばかりに僕の手を
引き玄関を出た。Rとお買い物。フフフ。まるでデートの
ような。若い娘っ子とふたりきりになるのは久しぶりなので、
つい口説きモードのような喋り口になってしまう。

「Rちゃん、夕陽がきれいだね」

「ハア?あなた、何言ってんの?」

家の中から嫁の声が飛んで来た。ちっ。
聞き耳を立てておったか。

Rを自転車の子供席に乗せるて走ると、久しぶりのチャリに
興奮したのだろう、

「キャアアア!とわおおううう!」

Rは大喜びの声を上げた。僕も嬉しくなって

「暮れーなどぅむー街のー♪ひかぁりとー
 はげあーたまー♪」

歌いながらチャリを走らせ、やがて本屋に着いた。しかし
悲劇はそこから始まった。Rをチャリから降ろすなや否や

「ギャアアアアア!」

大声で泣き始めてしまった。

「あらら、どうしたの」

チャリ席に戻すとピタリと泣き止むも、

「本屋でお買い物するんですよ」

再び抱き上げるとまたもや大泣き。どうやらもっとチャリに
乗っていたいらしい。いくらあやしてもレイザーラモン住谷の
ハードゲイに襲われたかのような大絶叫を上げ、商店街にRの
叫び声が轟いた。

道行く人が皆訝しげに僕の方を見る。へ、へへ…怪しいもん
じゃないよ…おいらベロってんだ…。

しかし元々ここはオタクが多い街。それに僕は最近お気に入りの
「アキバ系」とでかでかと書かれた服を着ており、

「幼女萌え変質者による幼女誘拐」

「いたいけな幼女にいたずら」

などと思われているのではないか…。い、いや、親子
なんです…。

ともかくRが一向に泣き止まないので本屋入店を断念。
仕方なくRをチャリに乗せて家にUターンしたのであった。

いくら僕があんな歌を歌っていたからといって

「涙こらえて 微笑むよりも 涙枯れるまで 泣くほうがいい」

歌詞の字面通りに泣きわめくことないじゃないかよう…。
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