セイント性夜。

「あなた、クリスマスプレゼントで欲しい物ある?」

と嫁に聞かれ、まさか女子高生幼な妻が欲しいと言う訳にもいかず、

「んー。別にない。お前こそないのか?」

「いえ私も別に。ごめんね、気の利いた贈り物とか思い浮かば
 なくて」

「あ、いや。僕もそうなんだけど…」

「じゃあ、今年はナシってことでいいよね」

嫁と結婚して4年(5年かもしんない)、その前に付き合ってた年数を
入れると15年程になる。僕らが付き合い始めた頃に生まれた女の子の
中には、クリスマスに初ニャンニャンしている子もいるだろう、と
考えると妙に興奮するが、一体何の話だ。

つまり、それだけ長く付き合っていると欲しいプレゼントのネタも
枯渇するのである。だからもう考えるのも面倒なので、だったら
いらないや…と思ったのだが

「おおそうじゃ。頼むからやらせて下さい。プレゼントは体でいい
 です。お願いします」

クリスマスにおける巷のカップルはあの手この手でムードを高め、
性交を崇高なるものにすべく励んでいるだろうに、僕はといえば
直球の土下座外交…いや、性交を目論んだのである。

娘・R(2才)と息子・タク(2ヶ月)の育児に疲れ果てている嫁は
とても僕の下の世話まで回らず、大変頻度の低いものとなっている。
それ故のお願いである。

「わかったわかった。はいはい」

嫁もそのこと以上に僕が欲している物はないと確信したらしく、
またそれ以上考えるのも面倒だったのであろうが、あっさりOK
してくれた。

「え、いいの?わーい。メリークリトリス!」

歓喜のままクリスマスイヴの夜。勿論猿のようにすぐまぐわう
訳にはいかない。まず僕がRとタクを風呂に入れ、その後嫁が
風呂に入る。嫁が風呂から出るまでの間に子供達を寝かせないと
いけないのである。

タクはまだ乳児なのでフニャフニャ言いながらすぐ寝てしまうが、
Rはそうもいかず、

「すなばいってぇ、しゅー(滑り台)やってぇ」

今日一日の出来事のダイジェストを延々と語るので

「そうだねー楽しかったねえーまた明日遊ぼうね」

にこやかに相槌を打ちながらも「早く寝ろ」と念力をかけていた。
ようやくRが布団の中で静かになり、

「ああ、ようやく寝たようだ。これで全ての準備が整った…」

と安堵したら…そこから記憶がなくなり気付けば午前4時。しまった。
寝落ちしてしまった。なんということだ。せっかくのチャンスを自ら
潰してしまうとは。しばらくするとタクの夜泣きが始まり、嫁が
むっくり起きた。

「あなた、寝てんじゃん!せっかくお風呂で体を綺麗にして
 出て来たのに、ガーガー寝てるし!」

「ごめん…Rが寝たところまでは覚えてるんだけど…今からでも
 遅くない!今からどうよ!」

「ダメ」

来年のクリスマスプレゼントは「まぐわい券(いつでも有効)」を
要求することにする。

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