お口の恋人で遊ぶ、僕の最後の恋人。

いざ買い物。

嫁の買い物に付き合った。嫁がスーパーで買い物を
している間、僕は娘・R(1才)を乗せたベビーカーを
転がしながら店内をうろついていたが、

「うきゃうううん、んぎゃぎゃぎゃ」

Rはすぐさま飽きてしまい、野犬の遠吠えのような声を上げた。
ベビーカーから出たいようだ。Rは自力で歩けるようになってから
まだ日が浅いので、自分で動きたいのだろうと思い僕は降ろしてやった。
するとRは

「でへへー」

待ってましたとばかりにヨチヨチと店内を歩き始た。僕は慌てて
後を追う。Rはやがてロッテガムの陳列棚のところでぴたりと止まり、
ガムを一個ずつ手に取り並び替えを始めてしまった。

たくさんの種類のガムがそれぞれの箱に収まっているのに、Rは
パイナップル味のガムをドラえもんのガムの箱へ、ブルーベリーの
ガムを梅味のガムの箱へ…と、もうごちゃごちゃである。

「R〜だめよ〜お店の人に怒られるよう」

「うきゃう!」

僕が注意しても邪魔するな、と反抗する。…おそろしい子!
ま、包みを破くわけでも汚すわけでもないからそのまま
やらせておこうと決めた。僕が元の位置に戻せばいい。

それでいいのですよね、微笑みの貴公子様…などと
ロッテガムのポスター相手に一人芝居をしていたら
嫁が「帰るよ」と呼びに来たのでRもようやくやめたのであった。

「へえ、じゃあRは棚おろしをしてたんだね」

家に帰ってからこのことを聞いた嫁は笑っていた。

そう、棚おろしだったんだよ。だから嫁、今夜は僕にも
週末の筆おろしをさせてくれー!ひとつになしましょうぞおまえ様…。

などと口説こうと思ったのだが、テレビでドラマの「ガラスの仮面」
を観ている内に眠ってしまい、僕の役目であるRの入浴の予定時間を
とうに過ぎても起きなかったのが嫁の逆鱗に触れ、とても言い出せなく
なってしまった。

また嫁のWEB日記にも酷く書かれるのであろう。
もう長いこと怖くて見ていない。

深夜の棚おろしどころか
日記にこきおろしになってしまったなこりゃ。
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