ヌーディスト庭


栃木の実家に帰る前に、子供達が遊べるプールがあるかどうか、母に教えてもらった…という話は前に書いた。

その時母は

「ビニールプール買っておこうか。庭でやればいいじゃん」

ということも言っていたのだが、

「たった1回こっきりの夏の帰郷のためだけに買うのは勿体無いよ」

と断った、というやりとりもあったのである。

あった筈なのに、実家に帰ってみると

「へい、ちょっと見ちらっせ(見てごらん)、実はプール買っちゃってさ」

空気を入れたらでかくなりそうなビニールプールを僕に手渡すではないか。

「母さん、いらないって言ったろう。頼むから金は自分の老後のために使ってくれ。孫に溺れないでくれ。」

「きゅうひゃくえん」

「は?」

「たったの900円だったんだよ。だからこれぐらい、いいでしょう?」

「えー。これが900円?」

思わず日本文化センターのテレビショッピングみたいなセリフを吐いてしまったが、驚きであった。さすがビニール傘も100円で買える時代である。昔、エロ本のことをビニール本って呼んでいたなあ、などとどうでもいいことを考えつつ、

「じゃあまあそういうことなら、ありがたきばば心に甘えさせていただいて…」

庭でプールを膨らまして水を張り、子供たちを遊ばせた。自宅なので娘・R(3才)も息子・タク(10ヶ月)もすっぽんぽんである。それに小さいプールだからいちいち子供たちを抱いたりしてなくても溺れる心配はない。こりゃ楽だわ。

「ごめんよう。お父さんが都内に庭付き一軒家を持てれば、毎日でもこうして遊ばせてやるのになあ…」

僕の頬を伝う水は、決して涙なんかじゃないわ。これは、プールの返り水なのよ。

タクは30分ぐらい遊ばせて終わりにし、Rも余程楽しかったようで、1時間ほどずっと遊んでいた。頃合を見計らって、体が冷え切らない内におしまいにした。

後片付けとして水を捨ててビニールプールの空気を抜いたが、ふにゃふにゃと小さくなっていくさまを見ると、僕はいつも途方もない虚無感を覚えるのである。

それは何故か。答えは自作の都都逸を以って代えさせていただく。

ビニールプールも 股間のアレも
コトが終われば すぐしぼむ~。


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