嫁の退院とツンデレ娘。

嫁が息子・タクを産んで3日目にしてとっとと退院してきた。
勿論一緒に泊り込んでいた娘・R(2才)もである。

しかし家に帰ってからのRは冷たかった。

「R〜お父さんだよ〜」

と抱こうとしても遊んでやろうとしても

「め!めーよ!」

ものすごい拒絶反応をして取り合ってくれない。

「きっと昨日お見舞いに来てくれなかったいじけてるのよ」

嫁が苦笑いしながら言う。そうなのである。昨日は嫁から

「Rが『パパどこかなー。パパまだかなー』ってずーっと
 言ってるよ」

というメールを貰い、思わず泣き出してしまいそうになったが、
仕事が終わらず病室に行けなかったのである。

しかし僕が色々Rにちょっかいを出している内に、Rはしかめっ面を
しながらも徐々に僕との間合いを詰めて来て、僕の横にちょこんと
座り、隣の床をポンポンと叩いた。僕にそこに座れ、ということ
らしい。

しばしRと足が触れ合うくらいピッタリ寄り添って座っていた。

「R、ごめんね。絵本読んでやろうか。ボールで遊ぼうか」

「えへへー」

うーん。なんという典型的なツンデレ娘であることよ。ツンデレとは、
普段はツンツンしているけれども2人きりになるとデレデレと甘えて
くるという女の子の状態を指すアキバ系用語である。

「ほぎゃー。ほぎゃー」

タクが泣き始めたので、生まれたての泣き声と泣き顔をビデオに撮って
おこうと思い、カメラを回し始めたのだが

「めーよ!パパ!めーよ!あっくん@*\@@#$%&!」

Rがタクの泣き声をかき消すぐらいの大声でめちゃくちゃ騒ぎ出し、
撮影を妨害してしまった!

「ダメよ。Rはパパと一緒にいたいのよ。女心が分からないパパで
 ごめんね、R」

と嫁に怒られてしまった。あーすまん。僕ももう少しツンデレ娘の
取り扱いを心得ていればもっとモテていたものを。

子供2人作ったから別にモテなくてもいいか。

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嫁が息子の名前をつけた。

「さて、名前をどうするかだけど…」

3日に生まれた息子のことである。娘・R(2才)の名前は僕が
とっとと決めてしまったので今回は嫁に命名権がある。そろそろ
決め時ではないかと思い、嫁がどんな名前を出してくるかとても
怖いものがあったが聞いてみたのであった。すると

「実はこんな感じで考えてるんだけどね…」

嫁はメモ書きを差し出した。そこにはいくつかの候補名と画数が
書かれていた。遂に来た。ドキドキしながらしばし熟読してみる。

…。
…。

よかった。特に奇抜な名前はない。飛偉楼(ひいろう)とか光宙
(ぴかちゅう)とか楽瑠琥(らるく)とか詩慧瑠(しえる)とか
間池留(マイケル)とかピヨ彦とかジュン市とか変な名前がなくて
本当に良かった。最近は「絶対読めないような名前にしてやる」と
いう意図があるとしか思えない馬鹿な名前が多いが、嫁が考えた
名前はわりとまともであった。

しかし嫁の最有力候補は僕が大方予想したとおり、某ジャニーズ系で
「ぶっちゃけ」とかよく言う人の名前であった。嫁が大好きなのだ。

しかししかしこの人にあやかって命名するというのは、旬を過ぎた
今更感が大いにある。今時「チョベリグー」とか言っているに等しい。

「嫁〜。やっぱりこの名前にするのか?」

「この名前にするとニックネームは『たっくん』になるでしょう?
 もうRは何故かこの子のこと『あっくん』って読んでるのよ」

本当なのだろうか。「たっくん」とは言えずに舌足らずに「あっくん」
よし、Rに聞いてみよう。

「R、この子はだあれ?」

息子を指して聞いてみると

「あっくん!」

ちゃんと答えたではないか。おのれ嫁、さては仕込んだのではある
まいか…と勘ぐったりもしたが、この子の命名については僕は何の
口出しも出来ないので、これも息子の運命だと思い、嫁の希望通りの
名でOKすることにした。

「君はたっくんだってさ」

息子に改めて呼びかけてみた。ジャニーズ系な名前を付けたからと
いって、顔もそうなることは遺伝子レベルから有り得ない話だが、
少しでもあやかってくれるかしら。

でも息子のしわしわ顔を見ると、キムタクというよりも魚拓の方が
近いのであった。

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産まれて2日目。息子の息子と対面。

息子(名前はまだない)が産まれた翌日、会社を少し早くあがって
助産院に入院している嫁を見舞った。

一緒に泊り込んでいる娘・R(2才)は、僕と一緒に出産に立ち会い
興奮したせいか明け方まで起きていたため、ぐっすり眠っていた。

そして産まれたばかりの息子も嫁の隣で寝ていた。ちょっと触れて
みると、細い目を開けてフニャフニャと泣く。折りしも若い女性
助産師が「失礼します」とおむつを替えに来てくれた。

「あのう…Rは女の子だから男の子のおむつ換えはやったこと
 ないんで 教えてもらいたいんですけど…」

「じゃあ僕も」

という訳で助産師におむつ換えをレクチャーしてもらう。Rの時と
違うのは、勿論男が男である証明をするモノの扱いである。僕も
息子の息子をまじまじと見るのはこれが初めてであった。

「…小さい」

産まれた直後に助産師は「立派なものがついてますよ」と言って
いたが、赤ちゃんのソレなんてこんなものだろう。

「普通もっと長くない?」

ところが嫁はストレートに言ってしまった。

「いやこんなもんでしょ」

「いえ小さいよ。大丈夫かしら」

いかにも知ったような口を聞いてなかなか納得しない。お前は過去
どんだけの男棒を扱って来たのかと。助産師は困ったような顔をして

「うーん、でも、成長すれば伸びる子もいますから!」

取って付けたようなフォローをした。フォローの裏側にはやはり
「小さい」という事実がある訳で、それは僕の遺伝子のせいであり

「息子よ、ごめん」

とりあえず謝っておいた。

「あら、どういう意味かあえて突っ込まないで起きましょうオホホ」

助産師が僕をからかった。うるさい。突っ込んだろか。

そのうちRがムックリと起き出してキャアキャアと暴れ始めた。昨晩は
出産を目の当たりにして多少ショックと緊張を感じたようだが、もう
いつもどおりである。時々息子の頭を撫でたりしてよいお姉ちゃんに
なりそうな気配。夕飯の後、

「ココ、お風呂を使わせてもらえないからRと銭湯に行ってくれない?」

と嫁が頼むので、先程の助産師に銭湯の場所を教えてもらい、Rと手を
繋いで出発。途中、後ろから歩いてきたおばさんに

「(Rの)チョコチョコ歩いてる後姿が可愛くてねえ」

追い抜かれざまに声を掛けられてる。しかし肝心の銭湯が見つからない。
30分程迷い歩き、そのうちRも疲れて「だっこ…」と言う始末。諦めて
助産院に戻った。道を教えてくれた助産師が迎えてくれたが

「見つかりませんでしたか?おかしいですねえ…あ、すみません!
 逆方向の道を教えてしまいました!キャー」

…ホントに突っ込んだろか。

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息子誕生記。

出産予定日に遅れること2日、ようやく「おしるし」(出血)が
現われて助産院に行くことになった。それが午前0時過ぎ。

眠っている娘・R(2才)を抱き上げると目を覚ました。まだ眠い
はずなのに車に乗せても愚図らず、窓からすれ違う車のライトを
静かに眺めていた。Rなりに何かを察しているのだろうか。

「R、もうすぐトロちゃん(胎児の仮名)が産まれて来るんだよ」

「ぶうぶ(車)、いっぱい!」

やっぱり察していなかった。R、なんて子!

助産院の診察室で横たわった嫁は徐々に陣痛の間隔が短くなり、
唸り声を上げるようになった。男親の無力さを感じさせられる
ひとときである。出産においてはガーゼ1枚の方が役に立つ。
出来ることといえば気力を出して貰うよう励ますしかない。

「嫁、気力出せ。調べたんだけど10月3日の有名人は…えーと、
 大助花子の宮川大助だよ」

「気力出ねー!」

励まし失敗。それどころか助産師達がオオウケしてしまったり
「え、誰?」「夫婦漫才の…」「ああ、あのウマ面の…」等と
混乱してしまったりし、出産作業をも妨げてしまった。

意外だったのがRである。マイペースなので途中で寝るとばかり
思っていたのに、起きたまま僕とじっと出産のさまを見ていた。
ほとんど喋らず僕と一緒に嫁の手を握る。母を心配して真剣に
なっているのだろう。

「ああああああ!」

嫁が一際大きな声を上げた。出産は動物の本能の行為であるから
獣にならなければ産めない、というのをどこかで読んだ。まさに
1キロ四方の全ての生き物を金縛りにさせるぐらいの獣の咆哮。

「うわあああん!だっこ!だっこ!」

とうとうRが耐えかねて泣き、僕に抱きついた。

「大丈夫だよ。ママは頑張っているんだ。トロちゃんと一緒に」

しかし嫁はあまり取り乱すことはなく、助産院院長以下の助産師
達の指示に従い、呼吸する時ときばる時のメリハリがあった。Rの
時はそりゃもう乱れて暴れて、恐ろしい助産師(通称ボブ産婦)に
怒られまくっていたのだが…

「ふやああん、ふやあん」

嫁の体の下から、確かに声がした。

「産まれました!」

「やった…」

「よくやった!R、産まれたぞ!」

「2時45分です!」

皆の声が交錯して、我が子が誕生した。ずっとうつむいていた
嫁が顔を上げた。

「本当によくやったよお前」

嫁は言葉にならぬ笑みを浮かべた。

「模範的なお産でしたよ」

院長も褒めてくれた。これで嫁のボブ産婦への屈辱も晴れた
であろう。僕は白い布にくるまれて泣く我が子を覗く。

「ようこそ。僕がパピーだよーん」

小さくて猿そっくりの愛らしい我が子を抱きしめたかったが、
それはまだ許可が出ないので後のお楽しみである。

「あ、先生、ところで男ですか?女ですか?」

最後の最後まで判明しなかったこの子。院長はにっと笑った。

「そういえば立派なものが付いていたような…見ます?」

「男ですかそうですか!立派ですか!僕に似たんですよ!」

最後の余計なひとことは全ての人に黙殺された。

「R、トロちゃん産まれたよ。弟だよ。分かるかなあ?」

誕生の瞬間まで緊張で固まったまま起きていたRは、ようやく
ニッコリ笑った。トロ…いや、これは胎児名だからその名で
もう呼べない。Rは僕が名付けたので、この子の名は嫁がこれ
から決めるのだ。

「さて、旦那さん」

出産後の処置をこなしていた院長が不意に僕を呼んだ。

「へその緒を切ってもらいましょう」

「えええ!そんなこと僕がするんですか!いや、ちょっと
 びびってますんで、お任せします…」

僕にはとても重要なことに思えるのに、まるでテープカットを
するような軽いノリで言われてしまったので、反射的に腰が
引けてしまった。今思い返すとやっておけば良かったような。

ひとまず嫁がこの子の名前をつけるまで、僕は密かに息子を
ヘソノヲノミコトと呼ぶことにしよう。

photo

もう仲良し。

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マジで産まれる?時間前。(追記:産まれました)

夜中。寝ていた嫁がむっくり起き出してトイレに入った。
ザザザーと水の流れる音がして、便所の扉がギイイ…。

「母ちゃん、紙」

…ではなくて

「おしるしが出た」

とのことでいよいよ第2子・トロ(仮名)が産まれることに
なりそうである。これから病院に行って、嫁の踏ん張りを
見届ける所存である。

あああ。何書いていいか分からないので現場より中継を
終えさせていただきます。

追記:

2:45に息子が誕生しました。母子共元気です。

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