父娘で赤ちゃん返り。

日曜日の9時ごろだっただろうか。普段なら子供達と寝てしまう
嫁が珍しく「テレビ見るから」と高らかに宣言した。

どうせ嫁の好きなキムタク主演のドラマとかで、タイトルが

「湯煙温泉キムタクはみちん殺人事件〜とし子宇宙へ〜」

などという低俗なドラマか何かであろうと思ったら違った。
「赤ちゃん返り」がテーマのドキュメンタリーであった。
赤ちゃん返りとは、赤ちゃんが生まれると親の関心がそちらに
行ってしまいがちなので、上の子がかまって欲しさのあまりに
「ご飯食べさせて〜」とか「おっぱい飲みたい〜」など今まで
ひとりで出来ていたことを親に甘えて逆行してしまうことをいう。

うちは息子・タク(生後3週間)が生まれたので娘・R(2才)が
そろそろそうなるのではないか、という時期である。

Rは今のところ赤ちゃん返りはしていない。しかしその内兆候が
表れたらどのようにすべきか…嫁はそれを学ぼうとしていた。
僕も嫁に倣って見ていたが、子供の赤ちゃん返りについてのみの
内容では片手落ち(差別用語)であると感じた。

育児に追われた嫁に相手にしてもらえないあまり、

「僕もおっぱい吸いたいでちゅー」

と赤ちゃん返りする夫の対処についても取り上げるべきである。
中には堰き止められた性欲をコントロール出来ず、本能の支配の下、
一匹の獣に先祖返りして嫁の知らぬ間にどこぞでみだらな行為に
ハマる亭主もいるであろう。

僕はそこまではいかない。野性を失った都会の生き物であり、翼の
折れたエンジェルであるので性の暴徒にはならない程度の分別はある。
しかしたまに女体のぬくもりが恋しくなるので

「嫁〜。だっこしてちょ」

と甘えようにもタクやRがいつも占拠していて近寄れないので寂しい。

夜、嫁がタクの授乳をしているところをRがじいと見ていた。

「Rちゃんも飲む?」

嫁はRが飲みたがっていると思ったのだろうか、そんな声を掛けた。
おおそうじゃ。お父さんも一緒に飲むー!と駆け寄ったのだがRは

「めっ!ちゃー(麦茶)飲む!」

あらら、Rのほうがしっかり乳離れしていることよ。娘がそう言って
いるのに父だけ嫁の乳首を咥えることほど情けないものはない。
やむを得ず我慢した。

酒を飲みたい夜があるように、
乳を飲みたい夜もあるなんて知らなかった。

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あなたが噛んだ、小指が気持ちいい。

殊の外、息子・タク(生後3週間)が泣きまくる日であった。

嫁も二児の母ともなると肝っ玉母さんになったようで、その程度では
動じない。料理に没頭したままである。そうなると金玉父さんの出番
であり、

「おお、タク、何故泣いているの?阪神が負けたから?」

と、抱き上げてあやすのだが、にっちもさっちもどーにも泣いてばかり
いる子猫ちゃん。おそらく腹が減っているのだろうと思い、

「母はあの通りだからとりあえずコレで我慢してくれ」

僕の小指をタクの口元にそっと含ませてやると

「ちうちうちうちうちうちうちう」

おおお。なんという吸い込みだ。池袋のヘルス嬢あたりには必須の
バキュームテクニークだぞこれ。嫁にもこれぐらいの技術があれば
もっと夜も楽しかったろうに。

以前嫁の母乳を飲もうとして(子を授かった夫婦は必ずやると思われ
る行為)結局吸えなかったことがあったが、成る程こういう舌使いで
攻めればいいのか、と負うた子に教えられたまましばし恍惚のひと時。

「ううう、うわあああん」

しかし至福の時間は長くは続かなかった。たとえ生後3週間の赤子とは
いえ、乳首と小指ぐらいの区別はすぐ付くようで、僕の指をぶっと吐き
出してから再び泣き始めた。

「そうだよなあ。お前も男なら乳首吸ってた方がいいよなあ」

結局ようやく台所仕事を終えた嫁が生乳プレイ(授乳と言え)を始めた
ので、タクは泣き止んだ。やはり母でないと駄目なものである。

こうしてタクは貪欲に乳を吸って1日50グラムずつ成長している。
このペースでどんどん大きくなって欲しい。

…と思ったが計算してみたら6年で100キロオーバーになってしまう
ことに気付き、ちょっと戦慄したのであった。

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09車。

娘・R(2才)を自転車に乗せてサイクリングやっほーしていたら、
向かい側から霊柩車がやって来たので

「親指を隠せー!」

と慌ててハンドルから親指のみを離して猿手握りにして隠したのだが、
Rは当然そんなことは分からず

「わっしょい!」

いや、お神輿じゃないから。

霊柩車を見たら親指を隠さないと親の死に目に会えない、という迷信は
昔、魔物は親指の爪から侵入してくるという俗信があり、その名残で
あるらしい。(「親指と霊柩車〜まじないの民俗〜」)

Rは親指を隠さなかったから僕の死に目に会えない。いや、所詮迷信。
ウダウダと悩む必要はない。しかし元がネガティブシンキングな僕は
どうしても暗い方に考えが行ってしまう。そこで僕はいろいろな受け
止め方を考えてみた。

1.ネガティブな親:

親の死に目に会えないということは、まさかRが僕より先に…。

(考えただけで縁起が悪いのですぐさま打ち消した)

2.ニュートラルな親:

そりゃ子供達に見守られて旅立つのがベストだけどなあ…。

(これぐらいの受け止め方にしておけば精神衛生上よろしい)

3.ポジティブな親:

なーに迷信迷信!地方によっては縁起がいいってとこもあるよ!

(とは言いつつもそこまで全肯定出来ない)

4.バカな親:

うはwwてことはRとずっと一緒にいれば、俺死ななくてよくね?
俺、クレヴァー!

(バカ)

はあ…いくら考えても根が田舎者なので、土着的な迷信を頭から否定
することが出来ない。おおそうじゃ。

神よ、Rはまだちっちゃくて分からないのでノーカウントってことで
お願いします。

よし…こう祈っておけばとりあえず大丈夫…ということにしとくか。

これを霊柩処置といいます。

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買い物しようと街まで出かけたら。

嫁に頼まれて娘・R(2才)を連れて近所のスーパーに買い物である。

Rは嬉しそうに店内を歩き回って売り物を見るたびに

「りんご!ばなな!だいこん!おねえしゃん!」

その都度叫んで知っている限りの知識を披露する。いや、お姉さんは
売り物じゃないからね。売ってたらお父さん買っちゃうからね。

お菓子の売り場に行くと、それこそ子供にとって魅力的なキャラ物の
おまけ付きの商品が待ち構え、だだっ子を持つ親にとっては地雷地帯
のような危険区域だと思うが、Rの場合は

「あんまん(アンパンマン)いたー!ぴかちゅう、いたー!」

馴染みのキャラクターを発見して喜びこそすれ、買って買ってと
ねだらないところが良い子である。

こうして嫁に命じられた物を求めつつ店内を回っていたら、アイス
クリームのコーナーを通りかかった。ここでもRは

「あいしゅー!」

真っ先に冷凍ケースに駆け寄るのだが、そこにはハーゲンダッツの
アイスが満載されていた。Rはハーゲンダッツのデザインを見れば
アイスであると分かってしまっている。普段質素な食事しかさせて
いないがアイスだけは別。嫁が大好きだからである。

今は息子・タクを産んだばかりなので苦しみながら節制しているが、
ハーゲンダッツの店によく行って食べているのである。

僕が子供の頃のアイスといえば30円とか50円などのものばかりで、
100円のものですら簡単に買えなかった。それなのにRは2才にして
スーパープレミアムデビュー済みであり、アイスといったらハーゲン
ダッツしか知らない。

「ガリガリ君がなければハーゲンダッツを食べればいいのにオホホ」

将来マリーアントワネットな娘にならなければいいがと少し心配。

買い物はあっさりと済んだ。

今はRは物欲が希薄というか、まだ幼いからだだをこねることもない
のだろうけども、今後おねだりをするようになったら娘激ラブの僕は
きっぱりと断れる自信がない。いつもの親父ギャグで煙をまくしか
ないのかもしれん。

求めよ、されど与えへん。

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娘の顔に傷がああああ!

仕事から帰ってくると娘・R(2才)の顔が傷だらけだった。

「どうしたんだそれ!何があった!嫁入り前の娘の顔にイイイ!」

ま、嫁になんか行かなくてもいいけど、猫に引っかかれたようなRの
顔が不憫でならず、嫁に詰め寄ってみると

「お母さん(僕の母)が公園に連れてって遊んでた時に、シャボン玉を
 追いかけて顔から転んだそうなのよ」

ということだそうだ。母は今日の夕方に帰った。仕事中だった僕には
「帰る」とメールが入っていたが、このことについては一切触れられて
いなかった。まあ母に責があることではないが…

「おおよしよし、痛くないか?かわいそうにねー」

Rの顔を覗き込むと浅い擦り傷だったのでほっと安心。シャボン玉を
追いかけてこけちゃった、というのがなんとも可愛いではないか。

「R、ばあちゃんと遊んでたの?」

「うん」

「シャボン玉したの?ふーって」

「ふー、したの」

「それでその時こけちゃったのかー」

「…うん」

しょぼーんとした顔と声で答えるRがまたなんとも可愛い。子供に
生傷はつきものだが、僕も気を付けなければ。といっても転倒防止
なんて気を付けようにもキリがないけど。

しかしRには既に鼻に傷跡がある。1才にもならない頃、爪で引っかいて
しまったと思われる、縦一本の傷跡が未だ消えないでいるのだ。

「これも消えてくれるといいけどなあ…」

よく見なければ分からないレベルではあるが、本人はえてして気にして
しまうものである。Rのコンプレックスにならなければいいけど。

そういえば僕の母も鼻に傷があって、それも言われないと気付かない程度
なのであるが、

「この傷、若い頃はずっと気にしててねえ」

ある日僕にボソッと言っていたことがあった。Rも年頃になって

「この鼻の傷が…」

と悩むようなことがなければいいが。その時は父として暖かい言葉を
かけてあげよう。

Rよお前のその鼻は、世界にひとつだけの鼻。

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