倦怠クリスマス。

12月に入り、夜の渋谷の街はイルミネーションで着飾られており、
マツケンサンバ、若しくはTOKIOの沢田研二の様なバタ臭さと
うざったさ全開の輝きを放っていた。

クリスマスの本気モードに入ったのである。既に恋人がいる者は
来たるべきクライマックスの日に向けて全力疾走し、顔射でフィ
ナーレを飾るもよし。

相手がいない者は必死に恋人探しにたまきん全力投球し、やっぱり
見付からず、ひとり街のイルミネーションを恨めしそうに眺めた後
エロスなイマジネーションを展開させマスターベーションに励み、
来年こそはと心に決めて崖から竹馬でダイビングするのもよし。また、

「俺は世間のクリスマスの浮かれポンチな騒ぎには流されないのさ。
 ウチ真言宗だしね」

とニヒルなフリをして寂しさを紛らわすのもよし。しかし本当に
醒めた目でこの街のうそ臭い光を見ているのは他ならぬ僕だ。

付き合って10年、結婚して…何年だったか。恋愛の絶頂期はとうに
過ぎ去り、ただひたすらの日常に埋もれるだけ。クリスマスにやる
ことといっても娘・R(2才)と息子・タク(1ヶ月)がいるため夜に
外出するわけにもいかない。だからRにサンタのコスプレでもさせ、
タクはまだコスプレは酷であるから来年のお楽しみにし、ほのぼの
と家でケーキを食べるのも良き哉と思う。

しかし遠い昔、街のイルミネーションが本当に綺麗に映ったあの頃。
ときめきメモリアルな恋人時代に戻りたいとも思う。今では既に
僕はときめきの夫ではなく、嫁もよろめきの人妻ではなくなった
が、嫁こそは長年連れ添った紛う事なき、好きになった人である。

子供達が手を離れた頃、もう一度嫁とふたりでクリスマス装飾の
街を歩くことは出来るだろうか。さすれば僕はイルミネーションの
中でコブシを効かせて叫ぶであろう。

好きになーった人ォー!

都ハルミネーション。

日記才人投票ボタン。投票のお礼に一言飛び出ます。初回だけ登録が必要です。↑
.
.

さらばネットデビューの思い出。

「古いパソコン捨ててよ。邪魔だから」

嫁の一声で僕がネットデビューした時に使っていたパソコンを
処分することになった。思えばこのパソコンとは初めてのネット、
初めてのWEBサイト作り、初めてのメール、初めてのメッセンジャー、
初めてのエロファイル収穫、初めてのブラクラ、初めてのウィルス
感染、初めて嫁にサイトバレして大喧嘩、等ネットに関する全てが
新鮮だった頃の喜びと悲しみを共にした。

今迄捨てなかったのはこの様な情が移っていたのもあるが、最大の
理由は別にあった。それは僕が今使っているパソコンを買った時に、
これを美少女Rちゃんにあげる約束をしていたのである。

Rちゃんとは僕が人生の中で出会った中で最強の美少女であり、また
最も惚れた女性である。惚れた勢いで産まれた娘にもRちゃんの名前を
そのまま付けてしまった。

近所のゲーセンで働いていて、僕もゲーマーだったのでしょっちゅう
会っていた。しかしゲーセンを辞めてからは徐々に会う事が難しく
なり、今は音信不通である。ケータイも繋がらない。どこに住んで
いるのかも分からない。

パソコンをあげる約束をしたのはゲーセンを辞める直前ぐらいで
あっただろうか。無論僕には考えがあった。Rちゃんにあげれば

「セットアップしてあげるよ」

と部屋に上がり込む口実が出来るし、トラブルが起きたら

「じゃあ見てあげるよ」

とまた上がり込むことが出来るし

「OSの再インストールだね。そして君にはLOVEのインストールを」

などと口説くチャンスも出来るではないか…という僕の希望に溢れる
鬼謀だった訳だが、約束はしたものの何時決行しようかとモタモタ
迷っている間に彼女は姿を消してしまった…。

「それでもいつか、Rちゃんがまたひょっこり電話でもくれて、
 パソコンちょーだい、って言ってくるのではないだろうか」

可能性としてはほぼゼロに等しい淡い望みにしがみつつ、捨てられ
ないまま今に至っている。しかしそれももうダメになった。息子・
タク(1ヶ月)の服が多くなり、パソコンを排除してタンスを設置
したいというのが嫁の意向である。

我が家においての嫁の権力は、北朝鮮における金正日のそれよりも
強大である。逆らうことは出来ない。

こうして僕の旧パソコンは回収業者に引き取られていった。
少しずつRちゃんとの思い出がなくなっていく。

Rちゃんはこの街を去り、僕は残った。
Rちゃんに縁のあるパソコンも家を去り、僕は残った。

しかし今はRちゃんの名を継いだ、というか無理矢理継がせた娘・R
がいる。名前に恥じないよう、立派な2代目美少女Rちゃんとして
成長してくれるよう、己の遺伝子の出来を顧みずに、そう願うしか
ない僕であった。つまり

パソコンは家を去り、ロリコンは残った。

しかしそれでもいつかは

Rもこの家を去り、僕は残る…んだろうなあ。

そんなことを考えると酔わずにはいられなくなる。悲しみだけを
ツマミにした娘酒。

嫁、酒をくれ。えっ君も去る?

なんてことになるような気がしてならない今日この頃。

日記才人投票ボタン。投票のお礼に一言飛び出ます。初回だけ登録が必要です。↑
.
.

あかずきんちゃん気をつけて。

これも日曜日、娘・R(2才)を連れてケーキ屋に行った時のこと。
店の女主人と話している常連客らしきおばさまがいた。

パンがなければケーキを食べてそうな上品な感じで、Rを見て

「あら可愛いお嬢ちゃんですねえ。おいくつですか」

と声を掛けてきた。

「はは、どうも。2才なんです」

僕が社交辞令的に返事をすると

「最近は物騒ですから、小さな女の子がいると大変でしょう」

近頃の幼女の痛ましい事件が多いご時世を反映してか、そんな
ことを言われた。

「はい、そうですねえ」

このおばさまはとりあえず適当な話題を探して気軽に言ったに
過ぎないと思うのだが、僕にはその話題はちょっと重すぎた。
前回の日記に書いたとおり、Rがちょっと見付からなくなった
だけで心臓が飛び出る思いをしたのである。

それに最近のいたずら目的の誘拐などは、根本的に防ぐ方法など
ないであろう。肩にガンキャノンの如くキャノン砲を付けて自衛
するとか、元スペツナズあたりのマッチョボディガードを雇うとか、
それぐらいしないとダメである。しかしそれは現実的に実現する
のは難しい。ていうか無理。

そのようなことをこの超他人事に話題を振ってきたおばさまに
言っても仕方なく、挨拶だけして買い物をして帰った。

僕自身も心配し過ぎだも思う。けれども、女の子誘拐殺人のような
事件がある限りは心配は残るわけで。Rはまだひとりで出歩くことは
ないが、それもあと1、2年の話である。

もっともロリータ誘拐犯より、どこぞの馬の骨に捕まる可能性の
方が高いのだが。そいつをぶった斬る自信はあるんだけどなあ。

日記才人投票ボタン。投票のお礼に一言飛び出ます。初回だけ登録が必要です。↑
.
.

娘はいずこ、娘は居ずや。

休日のことだが、娘・R(2才)と公園に行った。

いつも行く公園ではなくたまにはシチュエイションを変えて
みよう、という倦怠期の夫婦性生活改善策のような思い付きで
家から少し離れたところにある広い公園に行ってみた。

「うなばー!うなばー!」

早速Rは舌っ足らずの言葉で砂場で遊びたいとアピールする。前世は
砂かけババアなのではないかと思いたくなるほどの砂場好きである。
僕もRの横で、山を作ったり水を汲んできたりしてRの喜び組としての
役割を果たしていた。

ところが砂場には小2ぐらいの3人の男の子が先客としており、お前
ら全員ジェットモグラか、と言いたくなるぐらいのもの勢いで砂を
掘りまくっては、

「地中にうんこ発見!白いうんこです!」

「こっちにもあった!うんこ大漁!」

などと叫びまくって僕を恐怖のどん底に叩き落とした。

「R、ちょっと、砂場やめようか…」

どうりで砂ダンゴが作りやすいと思った、と僕は手を洗いたい衝動を
押さえられず、Rを砂場から引き離したところ、

「よーい、どん。きゃー」

トトト…と1人で走って行ってしまった。初めての公園を探索したい
のだろうと思い、僕は水道を探した。

水道を探すことしばし、ハッと思い出して「Rはどこだ」と公園内を
一瞥したがRの姿がない。しまった。見失った。いつもの公園とは
違い、ここは広い上に起伏もありひと目で公園全体を見渡せない。

「Rー!Rー!」

もう焦りまくって探した。公園の中にいてくれればいいが…外に出て
しまったらどうしよう!公園の外は車道と川だ!危険極まりない!
そう思った瞬間、僕は公園の外に出て外周の道路を走りまくって
探した。どこかにヨチヨチ歩いているRの姿があるのでは…それとも
もう既に…道路や川で倒れているRの姿が浮かんでゾッとした。

携帯なくしたとかそんなレベルじゃない大ピンチだ。おまけにここは
首吊り自殺が多いとか戦時中死体置き場だったとかで幽霊が出ること
でも有名だ。まさか千と千尋の神隠しでは…とか、どんどん悪い方へ
考えが行ってしまう。その時だった。

「あっ!R!」

外周の半分ぐらいを回った時であろうか、道路を探しつつ公園の中も
見ていたら、僕らが通ってきた公園入口からずっと奥にある、サッカー
などができるグラウンドのところにRがいた。

「Rー!ごめんね!」

ちょうどママさんサッカーの練習をしていたご婦人が、

「どこの子かしら」

とRの相手をしてくれていたので

「どうもすみません」

ご婦人にもお詫びをしてようやくRの手を繋ぐことが出来た。無事で
よかった。公園内にいてくれてよかった。Rを引き止めて見ていて
くれたのがご婦人で本当によかった。これが幼女大好きロリータ趣味
の三十路男だったら、と思うと脂汗が出る…ってそれは僕のことか。

また反省材料が出来てしまった。思い返せば、Rを見失って見つける
までほんの10分ぐらいかもしれない。しかし子供から目を離すな!と
改めて肝に銘じた。

とにかく今は再びRの手を引いて歩ける嬉しさよ。この様なだだっ広い
公園では大人しく遊ぶことにし、再び砂場に戻り

公園のうんこ混じりの白砂に
われ泣きぬれて
娘とたはむる

と、Rと一緒に一握の砂をさらさらと落としたのだった。


日記才人投票ボタン。投票のお礼に一言飛び出ます。初回だけ登録が必要です。↑
.
.

気をつけよう。甘い言葉と嫁の罠。

近所の「アンデルセン」という、童話みたいな名前のパンと洋菓子の
お店が新装開店したらしい。

新聞広告を見た嫁が

「ケーキを買うのよ!先着500名様にクッキーが貰えるのよ!」

とひとりで騒いでいた。

「あなたケーキ買ってくれば?誕生日の時ケーキ買ってあげられな
 かったからちょうどいいじゃない」

誕生日などもう一週間も前の話なのに何がちょうどいいのか分から
ないし、自分で自分の誕生日ケーキを用意するのか?と薄ら寒くな
ったが、娘・R(2才)が僕らのケーキ話を聞いて

「えーきぃ!えーきぃ!食べぅー!」

僕ら以上に食べる気満々になってしまったので、Rの午前中の散歩
がてら行ってみようか、ということになった。

「嫁、君はどんなケーキがいい?」

一応嫁のリクエストを聞いてみたところ

「私は…まだ産後1ヶ月半だから食べられない。おまけのクッキーで
 いいわ」

息子・タク(1ヶ月)を産んで間もない嫁がちょっとだけ哀れに思えた。
よしよし、君がおまけクッキーをボソボソ食べる前で、思いっきり
うまそうにケーキを食べてやるからな。

しかし目的の店「アンデルセン」に着いてみると…なんと100人以上
並んでいるのではないか、というぐらいの長蛇の列。何故たかが東京
場末の商店街のいち洋菓子店にこれほどまで並ぶのか。パチンコ屋の
新装開店じゃあるまいし。一体どれだけ待てばいいのか分からないし、
Rと一緒なのであまり待つわけにはいかない。恐るべしアンデルセン。

やられた〜嫁の甘言と甘いケーキにまんまと乗せられた〜。

「並んでる人全員糖尿になるがいい!」

と呪いの言葉をかけてアンデルセンを離れることにしたが

「ぱぱ、えーきぃ!えーきぃ!」

Rが「話が違う」とばかりに騒ぎ始めたので、こう返事をした。

「あそこのケーキはすっぱいのさ」

そりゃアンデルセンじゃなくてイソップだ。

ま、Rには気の毒だし僕も多少悔しかったので別の店でケーキを
買ってRのご機嫌も回復したのであるが…。

ケーキ回復。なんつって。

日記才人投票ボタン。投票のお礼に一言飛び出ます。初回だけ登録が必要です。↑
.
.
< 日記 19TOP