乙女ロード〜第一章〜



池袋西口公園を池袋ウェストゲートパークと呼ぶのなら、池袋東口は池袋イーストエンド+YURI、に決まりDA・YO・NE。そんなWA・KE・NE。

僕ら家族は、池袋東口にある通称「乙女ロード」付近を歩いていた。別に可憐な乙女達がたくさん歩いていたりティーパーティーをやっていたりオヤジ狩りをしている訳ではない。

むしろ乙女の対極に位置する、いわゆる「腐女子」と呼ばれるオタク女性が好む、ホモ系同人誌が売られている店が林立している通りを指す。オタク女性を誉め殺す意味での「乙女」であるらしい。

オタク系女性のイメージとしては、オタク男ほど酷くはないだろうが、おおむねハリーポッターがオカッパになったような、そんな女性が多いような気がする。

しかしオタク女性でも可愛い子はいる。かつて近所のゲーセンに勤めていた僕のお気に入りの美少女・Rちゃんもまたオタク少女であった。僕が今まで出会った中で最強の美少女であるにもかかわらず、現実にはありえない美少年達がまぐわうホモ同人誌を大量に所持しており、またそれのみならず

「かじりんも読んでみなよ。すっごくイイから」

僕にもホモ同人誌の素晴らしさを啓蒙させようと、何十冊も貸してくれた。本音を言うと、ホモの啓蒙などどうでもよく、Rちゃんを剃毛させたかったのは内緒である。

いずれにせよオタク女性に限らず、女性全体でもRちゃんのような美少女は稀な存在であることよ…と今は会う術もなくなった美少女を思い浮かべながら、果たして乙女ロードを歩くオタク女性達はどんなルックスだろう?とチラチラ眺めながら歩いていた。もしかしたらこの街角にRちゃんの姿が?というほんのわずかな期待も込めて。すると道の向こうからやって来たのは…

蓑に身を包み、出刃包丁を振り回し、鬼の面をした恐ろしい集団。

これが「腐女子」の恐ろしさか…と思ったらそれはオタク女性ではなく、3人(?)のナマハゲであった。

「ていうかなんでナマハゲー!」

嫁とひっくり返りそうになりながら叫んだが、ナマハゲ達はパレードをしているようであった。もっともこの近辺は色々な被り物をした輩がうろついているのでいちいち驚いていては体が持たない。

ナマハゲ達は「泣く子はいねが」と凄む恐ろしさはなく、通行人に手を振ったりしておどけていた。

「ふん。日和ったナマハゲなぞ怖くないわ」

そう思った僕は、娘・R(2才)に

「ほらR、あれがナマハゲだよー」

と指差してみたところ、ナマハゲもおあつらえのターゲットである子供を見つけて本来の習性を思い出したのか、Rに向かって「うがー」とかやってしまったのである。

「ぎゃあああああん!うわああああん!」

R、速攻で号泣。しまった。僕からすればただのコスプレ行列にしか見えないナマハゲでも、子供を脅かし続けて来た数百年の伝統は伊達ではない。Rにとっては充分怖かったようで。

「あ、泣いちゃった」

というナマハゲの中の人の声が聞こえた。いや、泣かせる気満々の格好でそんなこと言われても。

「あなた何やってるのよ。泣くに決まってるでしょー!」

Rは絶叫し嫁は僕を罵倒し、嫁とRと両方に謝る羽目となった。そんなこんなで乙女ロードの乙女観察どころではなくなってしまったが、彼女達がコレクター精神を燃やしてホモ小説を買い漁るところは一度見てみたいものである。

金に乙女はつけん!なんつって。


■はてなアンテナに追加アンテナに追加
■MYエンピツ追加
.

Trackbacks

< ヒキコモリンピック|TOP|抱いてくれたらいいのに >