おっぱい行方不明


「ねえ、私のオッパイどこにあるか知らない?」

関東平野のように平坦な乳を持つ嫁がそんなことを言うので

「そんなもん最初からないだろうが」

思わず舌打ちしながら答えてしまったら、嫁は少し寂しそうな
顔をして以下の通り訂正した。

「あ、間違えた。オッパイじゃなくてオッパイパッド」

ライフスペース
「シャクティパット?」

「オッパイパッド!」

オッパイパッドとは、嫁は息子・タク(4ヶ月)に乳をあげる身なので、普段母乳が漏れないよう乳に当てておく、いわば上半身の「多い日も安心」的アイテムなのである。

「いや、知らんけど…」

そんな物が家の中に転がってたらすぐ分かるはずである。

「おかしいなあ。見つけたら教えてね」

嫁はそう言ってタクの授乳を始めた。一方僕は、オッパイという甘美な響きを持つステキワードが連呼されたことにより、情欲が湧いて来てしまった。しかしタクはいるし、娘・R(2才)も横で遊んでいるので、子供の前で「やらないか」などとは決して言えぬ。なので嫁の肩を甘噛みして

「今夜どうだい。ぬふふーん」

という僕なりの配慮を心掛けたジェスチャアをしたのだが、

「め!」

まるでRを叱るような口調で一蹴されてしまい、とても悲しい気持ちになった。僕はオッパイパッドなどよりも嫁の性欲がどこに行ってしまったのか、それを探したい。

嫁は決して「ねえん、あなたあん」などとサカリの付いた狂った阿婆擦れのような真似はしないが、子供2人も出来たのだからそれなりにはあった筈である。

探し物は何ですか。見付けにくいものですか。それより僕とまぐわりませんか。うふっふー。うふっふー。うふっふー。

さあ!

あ…、嫁、寝ちゃった。子供達を寝かしつけるためとはいえ、嫁の寝る時間が早過ぎることが求愛のタイミングを逃す最大の原因である。

今何時?そうね大体ねー。
今何時?ちょっと待っててー。
今何時?まだ早いー。

ああ、今夜も僕の胸騒ぎの腰付きを披露できなかった。

勝手にオッパイパッド。
■MYエンピツ追加
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