ようこそここへ。靴靴靴靴。

朝、娘・R(1才)が寝起きざま、いきなり玄関に向かって
猛ダッシュしていった。

すわ、まさか初めての家出か…と朝っぱらから僕の背筋に
戦慄が走ったが、Rはすぐに戻って来た。

お気に入りのアンパンマンの靴を持って。

「てぃ?」

Rは「履かせて」と言っているのだから、ここはRを
叱らなければならない。

「素足のまま靴を履くと水虫になるぞ!」

いや、叱る趣旨が違っていた。

「家の中で靴を履いちゃいけません!」

しかし尻の穴に入れても痛くない愛娘の、期待満々の
瞳に見つめられては、僕はそれを突っぱねる術を知らない。

「何を持って来てるのよもう〜」

と嫁もやんわり叱るがそれ以上は言わない。

「しょうがないなあもう」

最初に履かせた頃はギャアギャア泣いて嫌がったのに
成長したものよ、と実は喜びつつ履かせるのであった。
実際、足も成長して靴のサイズも12.5センチ。もう少しで
僕のマーラーを越えそうである。大きくなったものだ。

(僕はRが嫁の腹にいる頃から、Rの成長具合を自分の
 マーラーと比較する癖がある)

「でへへへへー」

Rは嬉しそうに土足で家中を駆け回る。靴の感覚を楽しむかの
ようにわざとドタドタと足踏みもする。そんなに靴が気に入った
のなら、ガラスの靴でもこしらえてやろうかしら、なんてことも
考えてしまう。そしてガラスの靴を片方だけ持ち、

「僕の可愛いシンデレラ…君の王子様はお父さんなんだよ!」

なんてシンデレラごっこをしたら、さぞかしRの素敵な思い出に
なるであろうよ。トラウマになるかもしれないけど。

しかしいずれRが成長した時、どこぞの男がガラスの靴を持って、
こうしてRを訪ねて来るんだろうか。そしてRは靴を履いて男と
外に出て行ってしまうんだろうなあ…。

ま、その前にそんな男が来ようものなら、僕はガラスの靴なぞ
即座に叩き割って

「お前はもう死んでれら」

なんつって追い返してやる。

僕はヘン靴おやじなのである。
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