幸せカニ挟み。カニー!

休日なので嫁と娘・R(2才)と一緒に食べる夕飯である。息子・
タク(1ヶ月)は母乳オンリー。

ゴハンは「カニ飯」であった。カニと一緒に炊き込まれた飯に
数本の蟹の足の身が乗っている。僕は直感した。カニがこれ
だけだときっとRはペロリと平らげてしまうだろう、と。ならば
僕は自分の分には手をつけずにおこう…と思った。

別に献身的な親を気取ろうという訳ではない。僕はカニは好き
だが、自分で殻から身を取るぐらいだったら食べない方がマシ、
程度のものだからである。だったらより喜んで食べるであろう
Rにあげてやったほうがカニも浮かばれると思ったのだ。

とれとれぴちぴちカニ料理より、とれとれぴちぴち女子高生の
方が好みだ。であるからして、


「R、カニだよ〜」

と、Rに食べさせようとしたのだが、Rは

「めー!めーよ!」

顔を背けて食べようとしない。この舌の肥えた娘はエビが大好き
であるからカニもきっと好きだろうと思ったのにこれいカニ。

「そういえばRはカニは初めてだっけ」

「この子は初めてのものはなかなか食べないのよね」

食べず嫌いの僕に似たのかイマイチ食い付きが悪い。しかし
隙を見計らってちょいと口の中に入れてみたところ

「おいしー!かに、おいしー!」

一転してむしゃむしゃと食べ始め、僕の予想通り自分の分を
あっさり平らげ

「これは?これは?」

丸々残っている僕のカニを「食べないの?」と目敏く見つけ、
突撃オヤジの晩御飯とばかりに箸で突つき始めた。これも僕の
思った通りであったので

「はいはい、お食べ。全部あげるよ」

カニの身をほぐしてRのゴハンの上に乗せてやったのであった。

「えー全部あげたの?」

嫁は驚いていた。すまん嫁。せっかく僕に用意してくれたのに。
でもRの嬉しそうな顔を見てみたかったの。これがスキヤキの肉
だったら一歩も譲らないところだが。

「Rちゃん、パパにありがとうって言いなさい」

「ぱぱ、ぁりがとー」

舌足らずの娘のお礼の言葉は、カニの味より身に染みる。これ
だけで充分だ。こないだ見たテレビでは立派な越前ガニが出て
いて一杯4万も5万もするという。越前ガニとは高級ブランドガニ
なのだろう。勿論食べた事はないが、僕はイタリアにもの高級
ブランドガニがあるのを知っている。

ヴァレンチノ・タラバガニ。なんつって。

と帰った
のだが、

これはウチの奥様には言えネーゼ。

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