僕のツンデレラなシンデレラ。

朝、僕が仕事に出掛ける時の儀式。それは嫁とのちゅー。ではない。

確かに新婚時代はしていた記憶があるが、いつからやらなくなって
しまったんだろう。遅刻しそうなのに玄関で、朝の小鳥のさえずりの
ようにちゅっと口を合わせて、慌てて飛んでも8分歩いて接吻、と
駆け出して行ったもんだが…。

何がさえずりだ馬鹿野郎。今はせいぜいせんずりがいいところだ。
話を戻す。

朝、僕が仕事に出掛ける時の儀式。それは娘・R(2才)との握手と
バイバイ。一緒に握手をして

「あーくーしゅーでばいばいばい」

と手を振って僕は仕事に出掛けるのである。これをしないと僕は
仕事に行く足取りが5倍重くなるので重要な儀式なのである。
ところが今朝は何故かRの機嫌が悪くて

「じゃあパパ行って来るよ~行っちゃうよ~」

いくらRに誘い水をかけてもその手に乗ってくれぬ。それどころか

「めっっ!ばいばい!」

とっとと行け!と言わんばかりの冷酷な態度で追い出そうとする。

「何を怒ってるんだよ…もういいよ…」

Rをかまうのは諦め、息子・タクに向けてばいばーいと手を振って
みると、最近笑顔が増えてきたこの赤子は、満面の笑みを惜しげ
なく見せてくれる。おお我が天使よ。穢れなきその微笑よ。お前
ならイタリアにあるという幻の美男子学校に行ける。

「それじゃあね」

嫁に一声掛けて、靴を履いて、ドアを開けようとした瞬間

「ぱぱ!ぱぱ!」

Rが叫びながら走って来て僕の腕を掴み

「あーくーしゅーでばいばいばい!」

先程の意味不明の怒りの態度とは打って変わってニッコリ笑って
朝の儀式を済ませたではないか。

「どうしたんだ急に!」

と驚きを隠せない僕であったが

「ほら、Rはツンデレでから」

嫁が最近覚えたオタク系用語を口にした。ああそうであった。
Rはツンツンとデレデレの態度を非常に巧みに使い分け、僕の
心を捉えて離さない。

「か、勘違いしないでよね!Rがあくしゅしたいって言うから
 してあげるんだから!」

僕もRにツンデレ返しをして朝の儀式を済ませ、ようやく仕事に
行けるのであった。

嫁、君とは夜の儀式のオギノ式で…。
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