娘はジェラシー。父はイヤラシー。

息子・タク(生後2週間)を抱いている時の娘・R(2才)の反応。

いつもならば僕のところに寄ってきて

「だっこー。あっくん(タクのこと)、だっこー」

一緒にだっこをしたがったり、タクをニコニコしながら眺めて
愛でるのだが、この日は違った。泣いているタクをあやすため
よしよし、良い子だねーと抱いていると

「め!めーよー!」

Rが怒るのである。僕がタクを愛でていることに対しての怒りで
あることには明らか。

「ごめんねー。たっくん、今えーんえーんしてるからね」

とRをなだめても、ものすごい睨みを利かせたガンを飛ばして
いるのである。そう、これは嫉妬の眼差し。2才の幼児ではなく、
嫉妬に燃えるひとりの女の眼がそこにあった!

Rの瞳の中に燃えている嫉妬の炎は、大リーグボールも投げられる
であろうってぐらいの勢いであった。

「あら、Rちゃんすごいジェラシーよ」

嫁はノホホンと言っていたが、その眼差しは他でもないお前に
似ているのだよ!あれは遠い昔…いや、過去の話だ。現在の嫁
には僕に燃やす嫉妬など燃えカスすら残っていないだろう。

そんなひさかたぶりに女の情熱に当てられた僕は、痛いながらも
忘れていた快感を思い出したのであった。

恋だの愛だの嫉妬だの胸の痛むような男と女のかけひきをしては
夜な夜な身悶えていたあの頃…。ああ、そんな溢れ出て来る過去の
記憶が懐かしくもむず痒い。しかしR、いけませぬ。僕には妻と娘と
息子と嫁とせがれがいる身。

「タク…女には気をつけろ」

泣き止んだタクにそっと呟いて寝かせこと10分後、Rはいつもの
ように

「ぱぱー!おいでー!」

先程のジェラシーはどこへやら、ケロッとして僕にまとわり付くの
であった。結局この嫉妬をみせたのはこの日のみで、次の日も同じ
ことをしてみたが、いつも通りニコニコしながらタクを撫でていた。

一体なんだったのだろうか。女心は分からぬ…。

あ、そうか。これが女心と秋の空というやつであろうか。

秋深し 娘の嫉妬もいと深し

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