むしろ指、さされ隊。

嫁の誇らしげな笑顔がむふーんと迫って来て、

「Rちゃんにね、ママはどこにいますかーって聞いたら
 私を指差したのよ!」

1才の我が子が自分を母親と分かってくれた喜びを
報告してきた。だったら僕もやってみたくなるではないか。

夜だったのでRは既にお休み中であったが、深夜にムックリと
起き上がってきた。すわ、チャンス到来。

「Rちゃーん、あなたのお父さんはどこですかー」

Rはさっと人差し指を立てて僕に向けた。
キャー!Rが僕を認知してくれた!

「ね、Rちゃんはちゃんと分かってくれたでしょう」

なんというか、ハートを射抜かれた感じである。
で、めろめろになり床に就いた翌朝。
もう一度やってみようと思った。

Rが僕を父親として認めてくれていること。
それが僕に「僕は父親である」という再認識をさせ、
責任感もモコモコと湧いてくる。

「お父ちゃん、Rちゃんに綺麗なおべべを着せたいから
 お金稼いでくるぞ!」

出勤前のテンションも高くなることであろう。

「Rちゃん、あなたのお父さんはどこですか?」

既に起きていてオモチャで遊んでいたRに声をかけた。
さあ、僕の顔に、胸に、どこでもいい、突き刺さんばかりの
指を向けるがいい!

しかしRは僕には目もくれず、脇にあった
ちゃぶ台にすがりついた。

ちゃぶ台が父親だとー!

てめえ四つ足の安物家具の分際で僕の嫁に手を出しやがったな!
Rを仕込んだ時の体位は何だ!当然「ちゃぶ台返し」だろうな!
…なんつって。

この日、僕は仕事のやる気も失せダルダル。
このままではまずいので、家に帰ってから再度挑戦である。

「Rちゃん、あなたのお父さんはどこですかあああ?」

Rの目の前に、かぶりつきになって迫った。
Rの瞳の中にはナッシングバットマイフェイス、
他のものを映させない勢いで臨んだ。

Rちゃん、頼む。昨日の夜と同じことをしてくれれば
いいんだよ。しかしRはそんな父の願いを思いっきり
シカトし、人差し指を高く、天井に向けて突き出した。

「ああ、君のお父さんはお空の上にいるんだね…」

僕は草葉の陰に隠れなきゃならんのだろうか…。
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