関東大人災。

この世でまことに怖いもの。地震雷火事親父。

一昨日の夜のことであるが、大きな地震があった。
地鳴りを感じた瞬間、寝ている娘・R(1才)を守るべく、
嫁と共にRの上に覆いかぶさった。電灯が落ちてくるかも
しれないと思ったのである。

見よ、身を捨てて愛する者を守る父の雄姿。
テレビやマンガでは、主人公に岩が落ちてきたり矢が飛んで
きたりすると、脇役が咄嗟に身を盾にして覆いかぶさるカッチョイイ
シーンがよくあるが、現実にはなかなか機会がない。
一度やってみたかった愛のある行動なのである。

嫁にはよく覆いかぶさっているが、これは
愛ではなく欲情ゆえの行動である。

遠い昔、同じことがあった。

僕が子供の頃、やはり深夜に大きな地震があって、
驚いて目を覚ましたら父が既に僕に覆いかぶさっており
二度驚いてしまった。

「お前がタンスの下敷きにならないようにな!」

父は僕が寝ているすぐそばにあったタンスから守ろうと
していたのである。

「でもお父さんに当たっちゃうよ。危ないよ」

「いいんだ、それが親だ」

それを聞いて僕は幼心ながらに感動した。大人になった今では
タンスを抑えていた方が安全かつ確実だったんじゃないかと
思うのだがそれはそれ、思い出は美しいままにしておく。

僕も子を持ったら「それが親だ」という気持ちになれるのだろうかと
思ったものだが、今こうしてRを守っている。愛は受け継がれRもまた
同じことをし、愛は続いていくのだろう。ラブ・ゴーズ・オン。
なんつってうひゃひゃ。

結局電灯が落ちてくることもなく、Rも父の愛のある姿を
見ることもなく眠ったままで、無事に朝を迎えた。

出勤前にじゃれついてくるRと戯れ、

「ほーらRちゃん、高いよーん」

とRを肩車していたら

「がこっ」

昨晩Rの元に落ちてくるんじゃないかと心配した、
まさにその電灯にRの頭をぶつけてしまった。

「わー。ごめんよー!」

「ひぇっ。ひぇっ」

今にも泣き出しそうなRを抱きしめて必死にあやす。

「まったくもう!何やってんのよ!」

嫁からも雷が落ちた。地震でも起きなかった災いを
親父がわざわざ招くとは何たるダメっぷりであることよ。

愛だけじゃ娘を守れないようである。

この世でまことに怖いもの。地震雷ダメ親父。
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