嫁を食わねど高イビキ。

温泉から家に帰って来て一息ついた頃、くつろげたし良く寝れたし
良い旅であったことよと思い返し

「どうだ、お前もけっこう眠れたろう」

嫁も気分転換になって良かったのではないかと
尋ねてみたら

「寝られなかったわよ!」

とのことで…。あんれまなんでだべお化けでも出たんけ?と
母との会話ですっかり栃木弁に戻ってしまった口調で
考えた。

もしや僕が気が付かなかっただけで、泊まった部屋は実は幽霊部屋で
僕が熟睡している間、嫁はラップ音やポルターガイスト(騒々しい霊)、
はてまた金縛りになどに遭遇してたりして…と思ったが違った。

「鼾がうるさかったのよ…」

「ああ、母さんの鼾か。お前もうるさかったか。
 僕も起きてしまったよ。昔からすごいんだ。ごめんな」

「いや、あなたの鼾もうるさかったのよ!」

「ええ?僕も鼾かいてたのか?」

「そうよ!親子二代で!」

なんということだ。僕も母に負けぬ鼾をかいていたとは。
血は争えないものだ…。結構ショックである。

「それにあなたはヤラセロヤラセロってアホみたいに
 すがりついてくるし…」

「すまんね。箱根の大自然に囲まれて、お前を獣のように
 犯してみたかったんだよ」

「静かだったのはR(1才の娘)だけよ!」

Rだけは夜泣きをほとんどせず、静かに眠っていた。
旅先でも手のかからない良い子である。それに引き換え、

ラップ音ではなく雷鳴のような義母と夫による鼾。

ポルターガイストより騒々しい、地獄の亡者ならぬ
性欲の亡者と化した夫による「ヤラセロ」の呻き声。

更にはすがりつく夫による金縛り。

なんか心霊現象よりもタチが悪いような。

どうやら僕と母は、嫁に思う存分我ら一族の恥を晒してしまった
ようである。それでも笑顔を絶やさずに母と接してくれた
嫁には感謝しなければなるまい。

旅の恥はナマステ。
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